少年は復讐を目指し、今日も生きる。
ペンギンの刑
プロローグ
帝国歴1000年。
その頃の帝国内では、皆が国の節目を祝い、喜び、人々は完全にお祭りムードであった。
常に歓声が絶えず、食事もご馳走だらけで、それは素晴らしい一年だったという。
それは、或る少年のいる村も例外ではなかった。
「帝国の建国1000周年を祝って、乾杯!」
「「「「乾杯!!!」」」」
少年の村の酒場では、漢たちが酒を酌み交わしていた。
「おじさん達、うるさいなぁ…」
或る少年「ランド」は大声を出しながら酒を飲む漢達を見て、小さくぼやいた。
すると、
「しょうがないよ。おじさんだもん」
と、彼の女友達兼幼馴染である「リンネ」が、少し可笑しそうに声を弾ませて返した。
それでも納得いかなかったのか、ランドがむすっとしながら、
「でもさ、僕たちもいるのになんでこんなにうるさくするんだろうね?」
と言うと、リンネはまた、
「しょうがないよ。おじさんだもん」
と言って、今度も可笑しそうにクスクスと笑った。
やっぱりその答えにランドは納得がいっていない様子であったが、何をいっても「おじさんだもん」で返される未来が見え、それ以降ランドは口を閉じた。
そして、しばらく漢達は酒を飲み交わしながら大声で会話をし、ランドはそれに顔を顰めながらも、何故かずっとニコニコし続けているリンネと一緒に、トランプで遊んでいた。
そして、ランドが初めてトランプで勝ちそうになった時、突然、大きな音を立てながら地面が揺れた。
その音で、酒場にいた漢達は立ち上がり、すぐに外の様子を見に行った。
そして外の様子を見た漢達は戻ってきて、開口一番にこう告げた。
「噴火だ!!火山が噴火した!!!!」
この村は帝国でも辺境に位置しており、火山の麓に村を形成していた。
そのため、その言葉を聞いた酒場は、一瞬で混乱に陥った。そしてそれはランド達も同様であった。
ランド達が混乱で動けない中、漢達は我先にと、酒場を抜け出していた。
ランド達が困惑しきって泣きそうになった時、ランドのお父さん、「リンド」は、ランド達を抱えて、颯爽と酒場を出た。
「何やってんだ!死ぬぞ!!」
と、走りながらリンドは少し声を荒げてランド達に言った。
「パパごめん… でも怖くて…」
「私も…ごめんなさい。」
するとランド達は落ち込んだように返した。
まだリンドは小言を言うつもりだったが、ランド達の体の震えを感じ、
「行くぞ」
とだけ言い、2人を抱えて走り出した。
しばらく走り、村を抜けて、安全な高台に登ると、ランド達は黙って降ろされた。そして
「俺はちょっと様子を見てくる。」
と言ってリンドは村の方に駆け出していった。
それを見送った後、ランド達が彼らの村を見ると、溶岩は村の門の辺りで止まっていた、しかし溶岩から火が回ったのか、村はすっかり焼け落ちてしまった。それはランド達がさっきまでいた酒場も例外ではなかった。
「こ、怖かった…」
と、ランドは呟きその場にへたり込んだ。
リンネは何も言わなかったが、同様に青ざめた顔で床にへたり込んでいた。
しばらくその状態でいて落ち着いた頃、
「村、全部焼けちゃったね…」
と、リンネがどこか、確かめるように言った。
「そうだね。」
と、ランドは神妙な顔で頷いた。
そうして、その場にはしばらく気まずい沈黙が流れた。ランドがその空気から逃げるように思考を巡らせていると、ランドはふと、あることに気づいた。
(お父さん達がいつも火山の噴火は注意していたし、この先数十年は絶対に大丈夫って言ってたのになんで噴火が起こったんだ?)
ランドは不思議そうに首を傾げ、このことをリンネに伝えようとして、後ろを振り向いた。
するとそこには、
リンネの首はなかった。
呆然とするランドの顔に血飛沫が降り注ぎ、その匂いと暖かさが、これが夢や、幻でないことを教えてくれた。
「は?」
ランドはそう呟くことしか、できなかった。
足は動かなかった。手も出なかった。助けられなかった。
彼に出来たのは、ただ、見るだけ。
そう。見るだけ。
そして、彼は見た。彼女の首を持った白いローブ姿の男を。それは、村を包む真っ赤な炎を背景に、不自然なほど白く写っていた。
その背中には剣と斧のエンブレムが描かれていた。
そして、その瞬間。そのエンブレムは、ランドにとって一生忘れられないものとなった。
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