19、幽閉メロディ

 蜘蛛が薄暗い石壁を這い回り、冷気がじわりと肌を刺す。

 そんな地下牢に私は幽閉されていた。

 頑丈な鉄格子の奥には、壮年の門番が一人立っている。

 と、その時。

 どこからともなく鼻歌が聞こえてきた。

 声の方へ目線を移すと、こちらへ歩いてくる若い兵士の姿が見えた。

「そろそろ交代の時間です」

「了解。あとは頼んだ」

「はい」

 そんなやり取りの後、今度は若い男が牢の前に立つ。

 相も変わらず鼻歌を歌う彼。

 だが、その歌に聞き覚えがあった私は、一つ尋ねてみたくなった。

「なぁ、兵士さん」

「どうしました?」

「その歌はどこで?」

 すると、彼は伏し目がちに答えた。

「昔、おふくろがよく歌ってたんです。だから、時折口ずさみたくなるんですよね」

 さらに曰く、物心つく前に父が行方不明になり、母が女手一つで育ててくれたとの事。

 それを聞いて私は涙した。

 君は「そんなに泣く話でもないですよ」と言うが、違うのだ。

 こんな形でと再会したくはなかったんだ。

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