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風谷香楽
1日目
薄暗い部屋に、ぼんやりと光る液晶。
何も無い部屋でタイプ音だけが、終わることなく鳴り響く。
――パソコンを叩いても一人
なんてどうでもいいパロディが、頭に浮かんで消えていった。
ふぅ、とため息をついて部屋に静寂が訪れる。
そしてまたキーを連打する。
書いてはまた消し、書いてはまた消す。
そんな生産性のない作業を延々と繰り返している。
メディアの宣伝、友人からの紹介、個人的な興味。
今の時代、創作物の情報なんてものはどこからでも得ることができる。
創っても創っても、それらに追いつくことはない。
圧倒的な才能を前に、いかに自分が無力であるかを知る。
より良い作品に触れるたびに、自己否定は強まってゆく。
ふぅ、と再びため息をつく。
手が止まっている。
動かなければ、出せるものも出せない。
液晶に目を見据え、再び言葉を紡ぎだす。
画面の中の主人公は苦悩していた。
そんな主人公に自分の姿を重ねてしまう。
直後、頭を振り、浮かんだ嫌なイメージを振り払う。
想像の世界に自分を投射したところで何にもならない。
悩み、苦しみ、それを乗り越えて成長していく。
そんな、ありふれた物語。
主人公には、支えてくれる者がいた。
なら、自分は?
この想いを共有できる人なんているのだろうか。
……今日はこの辺にしよう。
パタン、と音を立ててパソコンを閉じる。
立ち上がって、また
ドアが閉まる音と共に、部屋には再び静寂が訪れた。
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