第二章 お嬢様の嬉しい報告

夕方、可憐様が学校から戻られた。


いつものように優雅で美しく、まさに天使の微笑みを浮かべていらっしゃる。


「お帰りなさいませ、可憐様」


私たちメイドチーム一同、深々とお辞儀をした。


「ただいま、皆さん」


可憐様のお声は今日もとても上品で美しい。


「今日は何か変わったことはございませんでしたか?」


私が尋ねると、可憐様はいつもよりも嬉しそうな表情をされた。


「実は、皆さんにお話ししたいことがあるんです」


お話し?これは珍しい。


私たちは可憐様を応接室にお通しし、お茶とお菓子をお出しした。


「実は——」


可憐様は少し恥ずかしそうに微笑まれた。


「お友達ができたんです」


お友達!?


私たちメイドチーム一同、思わず顔を見合わせた。


可憐様にお友達が!これは素晴らしいニュースだ!


「それは素晴らしいことですね!」


私は興奮を抑えきれずに言った。


「どのような方でいらっしゃいますか?」


「とても優しい方で、私の——その、特殊な事情も理解してくださって」


ああ、きっと可憐様の力のことも知っていて、それでも普通に接してくださる素敵な女性の方なのだろう。


「お名前は?」


「田中さんとおっしゃいます」


田中さん。きっと品のある、可憐様にふさわしいお嬢様なのだろう。


「毎日一緒に登下校をしているんです」


「まあ、それは素敵ですね」


私は心から嬉しくなった。可憐様にやっと同性のお友達ができたのだ。


可憐様は今まで、その特殊な能力のせいで友達関係に苦労されてきた。でもやっと、理解のある女性の友人ができたのだ。


「今度、お屋敷にもお招きしたいと思うのですが——」


「もちろんです!いつでもお越しいただいて結構ですよ!」


私は張り切って答えた。


「田中さんにも、可憐様の本当の優しさを知っていただきましょう!」


可憐様は嬉しそうに微笑まれた。


その夜、私たちメイドチームは作戦会議を開いた。


「可憐様にお友達ができたのは喜ばしいことだ」雪菜が分析する。「しかし、油断は禁物だな」


「そうですね。田中さんという方について、詳しく調べてみましょう」陽向がタブレットを操作している。


「えーっと、都立桜丘高校1年A組の田中——」


陽向の手が止まった。


「どうしました?」


「あの、美姫ちゃん。田中さんって——」


陽向の顔が青ざめている。


「この田中さん、男子生徒だよ」


「え?」


私は一瞬、理解できなかった。


「男子?まさか——」


「間違いない。田中慎也、男子生徒」


私の脳内で警告アラームが鳴り響いた。


男子!?可憐様のお友達は男子だったのか!?


「これは一大事だ」雪菜が眉をひそめる。「可憐様の純真さを利用して、不埒なことを企んでいる可能性がある」


「そうよ!」春花も拳を握りしめる。「可憐様を狙う不届き者に決まってる!」


私は頭を抱えた。


「どうして気づかなかったのでしょう——」


「まあ、可憐様も『田中さん』としか仰らなかったからな」


「でも、これは見過ごせません!」


私は立ち上がった。


「明日、私が可憐様に変装して、この田中という男子の正体を暴いてみせます!」


こうして、私の潜入作戦が決まった。

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