可憐なお嬢様の影武者メイド日記

トムさんとナナ

第一章 私は主人公ではありません!

「私は主人公ではありません!」


鏡に向かって、私——西園寺美姫は今日も自分に言い聞かせる。


「私はあくまでも、世界で一番素晴らしいお嬢様である水野可憐様の活躍を陰で支える脇役メイドなのです!」


そう、私の使命は明確だ。可憐様が学校で平穏に過ごせるよう、裏方として完璧なサポートをすることである。


「美姫、今日も朝から絶叫してるじゃないか」


振り返ると、同僚の北川雪菜が呆れたような表情で立っていた。黒髪をきっちりとまとめ、いつも冷静沈着な我がチームの参謀役だ。


「絶叫ではありません!気合い入れです!」


「まあまあ、美姫ちゃん。朝からテンション高いね〜」


現れたのは東堂陽向。明るい茶髪をツインテールにして、手にはタブレットを持っている。我がチームのIT担当だ。


「おはようございます、美姫さん!今日も可憐様のために頑張りましょう!」


最後に現れたのは南方春花。ショートカットの活発な子で、チーム一の身体能力の持ち主だ。


私たち四人は、可憐様専属のメイドチームである。


「それでは皆さん、今日の作戦会議を始めます」


私は胸を張って宣言した。


「昨日までの報告によると、可憐様は学校生活を順調に送られています。同級生からの評判も上々、先生方からも信頼されています」


「監視カメラの映像とSNSの解析結果も同じだね」陽向がタブレットを見ながら言う。「『万能少女』『力持ちお嬢様』って呼ばれてるよ。好意的な意見がほとんど」


「ただし」雪菜が口を開いた。「可憐様の特殊能力が徐々に知れ渡っている。注目度が上がりすぎると、何らかのトラブルの元になる可能性がある」


「そこで私の出番ですね!」


私は決意を込めて言った。可憐様に変装して身代わりになるのが私の特技なのだ。


「もしもの時は、私が可憐様に成り代わってトラブルを——」


「美姫」雪菜が遮った。「君の変装は確かに完璧だが、可憐様の『力』までは真似できないぞ」


「そ、それは——」


確かにそうだった。見た目は完璧に真似できるが、あの超人的な力だけはどうしようもない。


「大丈夫です!」春花が元気よく言った。「その時は私が影で手伝います!」


「君の身体能力では、とても可憐様の代役は——」


「だから大丈夫だって!なんとかなるよ!」


こうして今日も、我らがメイドチームの一日が始まった。

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