クオールとクース
猫姫花
第1話 煌めきのクリスタルオーブ
ホーエン・ローバート・コズリ。
頭文字を取って、H、R、K。
HRK白魔女学院、入学試験会場。
貴族や特権階級の子供達が隠れるために設けられた魔法学校。
他にも派生したHRKの学校はあるけれど、合格すれば大学までエスカレーター式の女学院への試験を受けに来た者たちが列をなしていた。
うわさに百合性が沢山いるらしいが、今のクオールにはちんぷんかんぷん。
何せ年齢は11歳、しかも試験のための列に並んでいる今、頭痛とめまいがしている。
合格すれば寮に入ることになり、両親とは特に会えない。
そもそもとある国の姫であることを隠しての試験。
『魔法能力に目覚めるかどうか』・・・それが今回の試験内容。
まず魔法力がないと、この学院には入れない。
並ぶ前に説明があったけど、「指定された場所に並んで下さい」だった。
「そのさい、みっつある試験位置、どの列に並んでいただいてもいいです」と。
会場は一緒で、列がみっつ出来た。
クオールは真ん中を選んだ。
だんだんと列の順番がせまっているけど、なんだかぼんやりとしている。
周りの女の子たちは、知り合いだったり親戚だったりするらしくわいわいしている。
金髪に金色の目をしているクオールを、珍しがるひとも少なからずいた。
列の順番が来て、クオールは小さな机の上にしかれた上質な布の上・・・
その上に置かれた「煌めきクリスタルオーブ」を目の前にした。
香水瓶を連想して、香りでも放っているのかしらと不思議がる。
何かが呼んでいるような気がする。
クオールのこの学校への入学希望動機は、まったく次のそれだけであった。
『何かが呼んでる気がする』。
少し変わった子であるクオールのその謎の動機に、両親は運命と命運を見たと言った。
なので試験だけでも、という運びである。
煌めきクリスタルオーブは、上部が十字架でその真ん中に丸い模様、そして横に三日月の飾りがあしらわれている小瓶だ。
机をはさんで審査員はクオールのななめ向かいにいて、
「はい次、煌めきのクリスタルオーブを両手で持ってみて」
とうながされ、クオールはそっと瓶を持ち上げた。
淡く光り出す中身は意思を持っているらしく、共鳴がはじまる。
クリスタルオーブのふたを開けて、意識を集中させた。
クオールは自然と目を閉じて、中の魔石を意識する。
彼女の周りに螺旋状の光の風が八方に衝撃波として周りに散った。
まばゆい。
手に持っている淡い光がきらきら弾けるように消えると、
唖然としていた周りの者たちのどよめきが、クオールの集中した。
カルテのようなものに羽根ペンで何かを書き込んだ審査員が「合格」と言う。
「あなたに魔石の守りがつきます」
クオールは魔法力に目覚めた、と言うことだ。
ため息が自然と出た。
そしていつの間にか、めまいと頭痛は止まっていた。
早くもホームシックになる自分を空想している所、大きなめまいがあった。
魔法力に目覚めたすぐあとには、ちょくちょく起ることらしい。
女装している麗しい側仕えが素早くやって来て、身体を支えてくれた。
気を失う前に兄やの実の名前を呼びそうになった。
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