第13話 無双劇
「最悪……」
ルークはその口癖を聞いて何か思い出そうとしていた。
「気にすんないつもの口癖だ。」
「でも、そうか。あなただったんだね。」
マレインとフマルは安堵の表情を浮かべる。
「なんなのだ、貴様は」
その中で一人、いら立ちを隠せない者がいた。
「どうやってここに入ってきた。我の空間魔法は――」
「まぁ普通の奴らと比べたら強いんじゃないか?ま、あの魔王の部下とは思えないほど弱かったが」
「…なぜ、我が魔王の部下だと?」
「はっ、ここで教えてやる義理はないな。というか四天王全員殺さなかったか?」
「…世代が変わったのだ。」
「あーそういうこと」
二人はマレイン、フマル、シルタの理解を置いて話を進める。
「つまり魔王から力を分け与えられてきたあいつらとは違って弱いってことだな」
ルークは再び拳を固める。
「なら俺一人で十分だ」
「…!そいつ光を使って――」
マレインがそう言い終わる前に新四天王、レヴィアタンの右腕は跡形もなく吹き飛んでいた。その勢いで体が吹き飛ぶ。
「――っぐ、は。ほ、本物、か。」
肩から流れていた青黒い血は既に止まっていた。
「なぜ、まだ生きている…」
「なぜ、ねぇ。あの戦いを生き残ったやつにでも聞けばいいのになぜそれをしない?」
「…いろいろ状況が変わっているのだ。貴様らが魔王様を殺したせいでな」
「はーいやいや、なんでも俺たちのせいかよ。」
はぁとため息をつき下を向く。
「だったらなおさら教えてやる義理はない。」
次の瞬間、レヴィアタンの両足が吹き飛んだ。
―――――――――――――――――――――――
「マレインさんとフマルさんっていうんだね。大丈夫?その左腕」
シルタがマレインとフマルの前でしゃがみ込み話しかける。
「だ、大丈夫だよ。なかなか現実を受け止めきれないけどね」
「あぁ、まさかあいつが12の英傑ルークだったなんてな」
少し離れたところからルークの姿を視認する。
「ひ、一目見て気づいてたみたいだけど…どうして?」
「ま、昔いろいろあったんだ」
「小さいころ会ったことあるんだよねぇ」
「そう、なんだ」
そんな雑談を交わす傍ら、ルークは拷問に似たようなことをしていた。
「お前たちはこの国になぜ来た?」
「……」
「どうやってここまで来た?」
「……」
「…っはぁ無言かよ。こっちは早くミヤ探したいってのに」
「…なぜ人間が3000年も生きている?」
右手と両足を失ったレヴィアタンは口にする。
「まさか不死の薬か?それとも禁――」
「さぁ?どうだろうな」
わざわざ答えを言う必要もない。
「……答え合わせはなし、か」
「当たり前だろう」
そうぶっきら棒に返事をする。
「…ここまで隠れてこれたのはその人のような姿のおかげか?それとも転移魔法陣かなにかがあるのか?……【答えろ】」
その言葉には怒気が孕まれていたように感じる。
圧倒的な威圧。普段のレヴィアタンならしゃべることはなかっただろう。だが状況も状況。自然と口が動く―――はずだった。
「――――貴様に言うくらいなら死を選ぶ」
その瞬間レヴィアタンの体が光る。まぶしく目もあけられないほどに。
だがルークは一切慌ててなどいなかった。
「【ハイドボックス】」
そういうとレヴィアタンの体が何か箱のような物で閉じられていく。
ボンッ。そんな音が聞こえた後、箱が開くとそこには塵の一つもなかった。
「たく、めんどくさいことになったな」
ルークは頭を掻き毟る。
「死を探す旅どころじゃねぇぞこれ。シルタ行こう」
「え?マレインさんとフマルさんは?」
「ん?」
気づいていなかったのだろうか。ルークは双子と目を合わせる。
「…どこで会ったっけ?」
「「もういいよ…」」
双子は諦めたように言い放つ。
「とりあえず、ありがとう助かった。」
「別に助けるために来たわけじゃないんだがな」
「ねぇ、情報はいる?旅の助けになりそうな」
「…情報?」
疑問を浮かべるルークにマレインが説明する。
「これでも情報屋をやってるんだよ。世界を渡りた歩いて自分で集めた確実な情報たち。いる?」
「まぁ、いらないことはないが。」
「ならあげる。そうだなぁ、何がいいと思う?フマル」
「北の大帝国とか?」
「あぁ、それはいい。…今、北の大帝国にはあんまり行かないほうがいい」
「どうしてだ?」
「今に始まったことじゃないんだがあそこは常に何かを意識してる。それに備えて非人道的なことを平然とやっている。だから、だな。」
その情報に対し、「わかった、用がない限り近づかないようにするよ」とルークは言い去ろうとする。
「あらもう行っちゃうんだね。相変わらずな人だ。」
「いつでもこの国に遊びにきなよ。待ってるからさ」
「あぁ、そうさせてもらう」
「ま、マレインさん!フマルさん!さようなら!」
そうして双子とルーク御一行は別れていった。それぞれの目標のために。
――――――――――――――
「で、ミヤは…」
時計台を出てすぐ何やら騒いでる女子を見つける。
「何やってるんだこんなとこで」
「あ!ルーク!これ見て!酷くない!?」
とある店をミヤは指差す。
「奴隷商だな」
「こんなのが許されてるなんて信じられない!」
「別に許されてるわけじゃないが…」
「どっちにしろ!こんなの見てられないわ!助けましょう!」
それで騒いでいたのかとルークは納得し同時に呆れもする。
「助けるのは無理だ。」
「どうしてよ!」
「まず金がいる。それも大金。今持ってる金なら…精々一人だな。」
「なら力ずくで…」
「やめとけ、営業妨害で逮捕されかねない。」
「………っ!」
ミヤが唇を噛み締める。
「だったら…一人…助ける!」
「これからの生活費を考えろ」
決して叱りはしない。ただ優しく諭すように話す。
「まずそいつを買う金がいる。次に生活費が+1人分…まぁそこは何とかなるかもしれないがどっちにしろ俺達がなんとかするようなことじゃ――」
「それが英雄の言う事なの!!?」
「…っちょ、静かに…!」
「あ…えー、うん。でもそれでも助けられるなら、私は何としてでもあそこから出してあげたい。助けたい。」
涙目になりつつミヤはそう訴える。
その言葉に心が打たれたのか、はたまた完全な気まぐれかルークは意を決す。
「わかったわかった。どうせ俺が良いって言うまで言ってただろうからな。特別だ。このあとの事は特に考えない!よし、買おう!」
そうして三人は奴隷商へと入っていった。
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