源内光子の幸せ
如月ふたば
第1話
手を握ったまま輝くような笑顔で私に言った。
「私とっても幸せなの。本当よ」
中学の時に出会った光子。
入学式の日から彼女はとても目立ち、噂の的だった。
とても美しく大人びた雰囲気を持っていたから。
偶然にも近くの席になり、少しずつ親しくなっていった私たち。
「あなただけには先に教えてあげる」と、少し誇らしげに言った彼女。
「私ねもうすぐ苗字が変わって
母一人子一人だった彼女の家庭に、源内桐生という義父が増えたのだ。
そして光子は今の源内という苗字になった。
ハンサムで仕事が出来て、誰にでも愛される紳士の桐雄。
母親に彼を紹介されすぐに光子は桐生を慕った。
「私が成長するにつれて、桐生も私を愛すようになったの」
大学卒業後に一人暮らしになった彼女は、私にこう言った。
「でもね、私たちは世間的には結ばれないでしょう」
だからだろう。
始めて彼女が選んだ恋人は、かなり年上の男性だった。
その次の恋人も、その次の男性も。
光子はいつも違う恋人を私に紹介したがった。
そして必ずこう言うのだ。
「あなたは私の親友でしょう。だから彼と会ってもらっているのよ」
始めの数人は嬉しかった。
友人が私に恋人を紹介してくれことは、友情の証みたいだったから。
しかし「桐生への恋」を告白されて以来、私の考えは打って変わった。
年配の男性を選ぶことで、桐生の姿を「恋人」に見ていること。
自分が本当の恋愛をしていると正当化するために私を利用したのだ。
恋人へも光子自身へも。
「私が愛人?
そんな下らないものと一緒にしないで。私たちは愛し合っているんだから」
そんな風に嘯く光子がある日出逢ったのが、彼女より少し年上の男性の
二人はすぐに恋に落ちたという。
晴れて恋人同士になった暁に、当然のように光子から紫雨を紹介された。
紫雨は少し桐雄に似ていた。
後日、光子から呼び出されて告げられたこと。
「紫雨はね、義父の甥にあたるんですって」
そう言ってただただ嬉しそうに紫雨の事を語った。
恋人と過ごす時間が忙しいらしく、彼女からの連絡は減った。
久々に光子から連絡があった。
晴れてプロポーズされたからだという。
わざわざ光子は私を自分の家に呼びつけたのだ。
本日のご報告のためにだという。
いつも「親友」と言って、私を母だか姉妹代わりにしていた光子。
紫雨も桐雄の代わなんだろう。
自分の幸せを確認するために、利用されている私。
彼女の「幸せ」には本当に反吐が出る。
源内光子の幸せ 如月ふたば @Feb_futaba
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