終章:新しい朝
意識を取り戻した俊介は、病院のベッドにいた。隣には、目を覚ました阿偉がいた。
「俺、どうしちゃったんだろう……」
阿偉は何も覚えていないようだった。
俊介は、彼に一連の出来事を話すことはしなかった。ただ、彼を無事に病院へ運んだことだけを伝えた。
退院後、俊介は再び台北の街に戻った。
街は何も変わっていなかったが、彼の世界は一変していた。スマホには、もう不気味なメッセージは届かない。夜、窓から見える路地裏に、赤い影が立つこともなかった。
彼は、時々、夢を見る。
池で釣りをしている夢だ。しかし、そこにいるのは、人間のような顔をした魚ではない。ただの、美しい鯉が泳いでいる。そして、池のほとりには、赤い服を着た女の子が、笑いながら立っている。彼女はもう、彼に手招きはしない。ただ、穏やかな目で彼を見つめているだけだった。
呪いは終わった。しかし、俊介の心には、彼が向き合った真実が深く刻まれていた。彼は、呪いを終わらせるために自らの血を流したが、その代償として、彼の一族の罪と、失われた家族の記憶を背負うことになった。
それは、彼に課された新しい人生の始まりだった。
台北の街に、夜明けの光が差し込む。それは、まるで、彼の新しい人生を祝福しているかのようだった。
台北怪談 血の記憶 星月夜 @kojimaru32
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