【電柱転生】雷神詐欺を焼き払った柱の話

ずみ

ただの電柱が、最強の神話になった話

――俺はただの電柱だ。

街角に立って、犬にマーキングされ、酔っ払いに蹴られ、カラスにフンを落とされる。


動けもしないのに毎日地獄。



そんなある日、ドゴォンと雷直撃。

一瞬で視界が白く裏返り――気がつけば、異世界の村の広場に突き刺さっていた。


「天から柱が降りた!」

村人が口々に叫び、手を合わせる。

……いや、ただの電柱だぞ俺。





最初にやってきたのは、いかにも怪しい神官だった。

「この柱こそ雷神の依り代! 布を買えば加護が得られるぞ!」

と声を張り上げ、村人から金を巻き上げていく。


俺の体にお札や布をペタペタ貼りつけやがった瞬間――


バチィィィィン!⚡️


雷が直撃。神官のカツラが宙を舞い、ツルピカ頭が広場にデビュー。


「神罰だ!」


神官は泡を吹いて倒れ、二度と立ち上がらなかった。


――いや、俺ただの電柱なんだが。





次に現れたのは、ふんぞり返った役人。


「神の柱は国の所有物!税を払え!」


と叫び、俺を抱きしめてアピール。


……その瞬間。


ビリビリビリッ⚡️


髪がアフロみたいに逆立ち、白目をむいてひっくり返った。


「柱が正義を示したぞ!」


――いや、漏電しただけだから。





最後に来たのは勇者パーティー。


「俺が柱を斬り、雷神を従える!」


剣を振り上げた途端、電線に引っかかり――


ビリビリッ!


勇者は転げ回り、僧侶も魔法使いもまとめて感電ダウン。

広場は拍手喝采。


「雷神が勇者すら退けたぞ!」


――いや、なんもしてない。勝手に絡まっただけ。





それでも村人は俺を讃え、神殿を建て、『雷神柱祭』を始めた。

夜には灯りを吊るし、子どもはかくれんぼの待ち合わせに使う。


――立ってるだけで神様扱いか。

――まぁ犬にマーキングされてた頃よりは、ずっと悪くないな。





――俺はただの柱だ。雷も感電も、勝手に起きただけだ。

――けど人間は、それを神話って呼ぶらしい。


………電線一本で崇められるなら、俺の町内の仲間たちも、とっくに神殿に祀られてるはずなんだけど。




⚡️完⚡️



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うちの近くの電柱が雷落ちそうな顔してたので書きました。

最近、雷平原みたいなことが多くて困ります。

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