第36話
「新君……今、なんて言った?」
「あ、いや、その……」
煙の奥から目を丸くして俺を見る柊に、もう一度同じことを言うことに戸惑った。
肉がじゅーっと焼けて、焦げそうになっている。
「あ、あの、肉が」
「う、うん」
慌ててお皿に置いてから、柊はゆっくり視線をあげた。
「あ、あの……さっき、好きって」
「……うん。俺、柊さんが好き、なんだ。だ、ダメかな?」
どう聞けばいいのかも、どんなふうに答えを待てばいいのかもわからない。
なにせ人生で初めて告白するのだから。
それに、ずっと一緒にいて仲良くなれてきた彼女との関係を一気にぶち壊すことを言ったのだから、平常心でいられないのも当然だ。
このまま付き合えるのか、それとも気まずくなるのか。
現状維持、なんてものは多分ないんだろう。
初めての告白だけど、なんとなくそんなことはわかる。
もう、後戻りはできない。
だからやっぱり、期待する返事が来ることを願いながらじっと彼女を見ていると。
「うっ、ううっ……」
突然、柊が泣き出した。
「え、ど、どうしたの?」
「ご、ごめんなさい……あの、私、その」
目を覆って泣く柊に、俺は慌てておしぼりを渡しながら後悔した。
やっぱり告白なんてするんじゃなかった。
こんなの、明日からどんな顔で彼女と仕事したらいいんだと。
思っていた矢先。
「……嬉しい。新君、私のこと好きでいてくれたんだ」
「え、それって」
「私も。私も好き。好き好き好き! 初めて助けてくれたあの日からずっと好き!」
立ち上がって、柊さんが大声でそう言った。
「え、好き……好き!?」
なぜか俺も立ち上がってしまった。
そして二人とも立ち上がったところで周りの視線を感じて慌てて座ると、柊も顔を真っ赤にしながらちょこんと座って。
「好き……だから、その、好き」
「お、俺も。あの、それってつまり、ええと」
そのあとの肝心な言葉が出てこず、まだこれが夢じゃないかと半信半疑なまま口をぱくぱくさせる俺に柊は。
真っ赤な顔をもう一段赤くしながら。
小さな声で言った。
「……彼女に、してくれる?」
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