第17話

「はあ……」


 夕方の営業が終わり、片付けをしている最中に俺は一人でため息を吐いた。


 あの笑顔が頭から離れない。

 それに、あの言葉も。


「明日はデート、かあ」


 わざわざデートなんて言葉を使ったことに深い意味があるのかどうかはわからないけど。


 柊は明日、俺とデートをするつもりでいてくれている。


 しかもそれを楽しみにしているようにも見えた。

 少なくとも、嫌ではないはず。


「お疲れ様、森崎君」 

「お、お疲れ様柊さん。一日ご苦労様」

「お互いね。それと、明日なんだけど」

「あ、明日?」

「そんなに驚いてどうしたの?」

「え、いや、な、なんでも」

「ふふっ、変なの。明日、モーニング終わったあとだけど、お昼までの間どうする?」

「あ、ああ、そうだね。んー、この辺は大して何もないもんね」

「だよね。だからさ、せっかくだし電車乗らない? 少し行って大きな駅ならいっぱいお店あるし」

「電車かあ。うん、それもいいかもね」

 

 あっちの駅の方にはどんな店があるのかなと、スマホで検索していると。


「雪愛ちゃん、ちょっといーい?」

「はーい」


 母に呼ばれて、柊が厨房を向いて走っていった。


 その後ろ姿を見つめながら俺はまた、大きく息を吐いた。


 明日はデート。


 ……手、繋いだりするくらい、いいのかな。



「明日は頑張ってね雪愛ちゃん。あの子奥手だから」

「は、はい。頑張ります」


 厨房の奥で、おばさんと私は作戦会議をしていた。


「多分だけどあの子から告白してくるなんてことは考えにくいかなあ。もう、いっそのこと押し倒してやらないと」

「そ、そんな、押し倒すなんて」

「新はパパに似てるからねえ。私もね、パパを口説いた時は自分からグイグイ行ったわよ」

「そ、そうなんですね。でも、女の子からグイグイいって、嫌がられないですか?」

「雪愛ちゃんくらい可愛い子なら、誰でも嬉しいはずよ。大丈夫、明日は一日あるから。私は新と雪愛ちゃんが一緒になってくれたら嬉しいし、応援してるわ」

「は、はい。頑張ります」


 これ以上ない後押しをもらって、私のやる気スイッチは全開だった。


 押し倒す、なんて度胸はないかもしれないけど。

 それくらいの意気込みと覚悟はできた。


 明日のデートで、絶対に新君に私のことを好きにさせてみせる。


 手を繋いで買い物をして。

 肩を寄せ合いながら映画を観て。

 見つめ合いながらご飯を食べて。


 一緒にこの店に戻る頃には……うん。


「私以外の人が見えなくなるくらい、私、頑張る」

 

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