第3話 トンファーバトンの男
レミントンが去った後、アラタたちは再び車に乗り込み、街へと向かった。彼らの心には、イングラムとの激闘、そしてレミントンとの再会が深く刻み込まれていた。それは、単なる企業の再建物語ではなく、人としての誠実さ、過ちから立ち上がる勇気を試される、厳しい道のりだった。
街にたどり着いた彼らは、ひとまず近くのホテルに身を隠した。イングラムの残党が、再び襲ってくる可能性を考えたからだ。ユウはホテルのWi-Fiを使い、イングラムの残党に関する情報を探し始めた。すると、意外な事実が判明した。
「アラタさん、これを見てください」
ユウが見せた画面には、イングラムの残党を名乗るグループの動画が映っていた。彼らは、レミントンがリーダーだった頃とは明らかに違う、暴力的なやり方で行動していた。彼らは、レミントンが残した「イングラム」の名を汚し、アルラ食品の再建を妨害しようと、様々な工作を仕掛けていたのだ。
「レミントンさんは、これを阻止しようとしていたんだ…」
アラタは、レミントンの言葉の意味を改めて理解した。彼は、イングラムという組織を内部から清算しようとしていたのだ。しかし、イングラムの残党は、レミントンが計画していたよりも、はるかに悪質だった。
その時、ホテルの廊下から、銃声にも似た鈍い音が響いてきた。
「…来たか」
タカシはそう呟き、ゆっくりとドアに近づいた。アラタたちが警戒する中、ドアが勢いよく開け放たれた。そこに立っていたのは、見慣れない男だった。その男は、二本の棒状の武器、トンファーバトンを両手に持ち、不敵な笑みを浮かべていた。
「イングラムのリーダーは死んだ。だが、我々は死なない。お前たちの再建の夢は、ここで潰える!」
男はそう言い放ち、トンファーバトンを構えた。タカシは、イングラムとの戦いで身につけた格闘技術で応戦しようとした。しかし、男の動きは素早く、その攻撃は予測不能だった。
タカシの決意
タカシは、男のトンファーバトンによる攻撃をかわしながら、必死に反撃の機会を探していた。しかし、男の攻撃は、タカシの動きを完全に封じ込めていた。その時、タカシは、かつてレミントンから教わった言葉を思い出した。
「力に頼るな。相手の動きを読め。そして、相手の弱点を突け」
タカシは、男の動きを冷静に分析し始めた。男は、トンファーバトンを振り回すことに意識を集中しており、足元がおろそかになっていることに気づいた。タカシは、男の攻撃をかわすと同時に、男の足元に滑り込み、体勢を崩した。
男がバランスを崩した隙に、タカシは渾身の一撃を男に浴びせた。男は苦悶の声を上げ、その場に倒れ込んだ。タカシは、イングラムの残党を制圧することに成功したのだ。
「…これで終わりだ」
タカシは、男の武器を奪い、そう言い放った。しかし、男の口角は、不気味に吊り上がっていた。
「終わりだと?これは、まだ始まりに過ぎない…」
男はそう言い残すと、気を失った。タカシは、男が持っていたUSBメモリを回収した。ユウがすぐに解析を始めると、そこには、アルラ食品再建を妨害するための、新たな計画が詳細に記されていた。イングラムの脅威は、まだ終わっていなかったのだ。
彼らは、レミントンの言葉の真意を悟る。イングラムという組織は、一人の人間が作ったものではなく、彼らの悪意そのものが生み出した、恐ろしい存在だった。アラタたちは、この終わりなき戦いに、再び立ち向かうことを決意した。
彼らの戦いは、これからさらに激化していくのだろうか?
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