第2話 レミントン
ユウの巧みなプログラミングと津田の操縦技術によって、重機は唸りを上げて動き始めた。彼らは、崩れた土砂を少しずつ取り除き、脱出路を確保しようと試みた。しかし、重機はイングラムが使用していた古い機種で、思うようにパワーが出ない。焦り始めたその時、タカシが叫んだ。
「この先、もう一台重機があります!」
それは、イングラムが予備として用意していたのだろう。タカシが指差す先には、真新しい重機が崖に埋もれるようにして放置されていた。ユウはすぐに、その重機を遠隔で操縦するプログラムを書き換え始めた。
「よし、動きます!」
二台の重機が、まるで意思を持ったかのように、協力して土砂を掻き分けていく。アラタは、その様子をじっと見つめていた。彼の脳裏には、亡くなったアルラ食品の社員たちの顔が浮かんでいた。彼らの死を無駄にはしない。その思いが、アラタを突き動かしていた。
レミントンの介入
夜が更け、彼らはようやく崖の下にたどり着いた。しかし、そこは完全に孤立しており、携帯電話もつながらない。途方に暮れる彼らの前に、一台のオフロードバイクが現れた。ヘルメットを脱いだその男は、彼らがよく知る人物だった。
「アラタさん、無事でしたか」
レミントン。かつてイングラムのリーダーを名乗っていた男だった。彼は、あの爆発で命を落としたと思われていた。
「どうしてここに…」
タカシの問いに、レミントンは静かに答えた。
「あなた方が、この場所を通ることを知っていた。そして、この崖崩れも、奴らが仕組んだものだと」
レミントンは、イングラムの内部で、彼らの計画を知っていた。イングラムのリーダーを撃ったのは、タカシを助けるためだけではなかった。彼は、イングラムの恐ろしい計画を阻止するため、そして自らの罪を償うために、独自に行動していたのだ。
「私には、まだやらなければならないことがある。あなた方には、アルラ食品を再建してほしい。そして、私たちが犯した過ちを、二度と繰り返さないでほしい」
レミントンはそう言い残すと、彼らを乗せるために用意した別の車を指差した。
「私たちは、あなた方の誠実な告発に心を動かされた。しかし、私のような人間が、あなた方の未来に手を貸すことはできない。私は、私のやり方で、イングラムの残党を追う」
彼の言葉に、アラタはただ静かに頷いた。レミントンは再びヘルメットをかぶり、暗闇の中へと消えていった。
新たな決意
レミントンが去った後、彼らは再び車に乗り込み、街へ向かった。イングラムとの死闘、そしてレミントンとの再会。彼らは、多くのものを失い、多くのものを学んだ。そして、この経験は、彼らの心に新たな決意を芽生えさせた。
アルラ食品の再建は、単なる企業の立て直しではない。それは、人間としての誠実さ、そして過ちから立ち上がり、未来を切り開いていく、人間性の物語。レミントンが残した言葉を胸に、アラタたちは新たな一歩を踏み出した。
彼らは、どのような未来を築いていくのだろうか?
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