Night Dream ~青い閃光~


 うさ瓶ランド・恋愛シミュレーションゲーム風超短編――

 


 彼を最初に目にしたのは深夜のBARだった。



 友達と食事をした後、不意に一人で飲みたくなってフラリと立ち寄ったウエスト・ギア・ボローのアンティークなBARの店内。


 一番端の...目立たないカウンター席に独り……。


 ランプが灯る薄暗がりの中でも、彼がかなりのイケメンだと言う事は明白。


 凛々しい顔立ちに精悍な体格……。


 深くて青い長い髪を無造作に結っているけれど……お洒落には気を使っていそうな身なりをしている。


(……好み...!!)


 そうは思ったけど、端にいる彼の隣へわざわざ行って座るのも……。


 そう思ってほんの少し、離れた所へ座る。


 勿論、彼を見ていられる範囲内。


 カクテルをオーダーし、何気ない振りをして彼を視界の端に留め置く。


 彼の手元のグラスからすると……


 飲んでいるのはシャンパンのようだった。


 この日はただ……彼の様子を見ながらカクテルを飲んで終わってしまった。


 あの日の夜以来、私はあのBARに通うようになっていた。


 何かきっかけが出来て彼と話が出来たら良いのに……。


 そう思いながらBARに通いつめて、何度目かの夜の事。


 そのきっかけは唐突にやってきた。


 いつものように店内へ入り、彼の姿を探す。


(今日は来てないのか……)


 見当たらないお目当ての姿にガッカリしていたら、横から急に声をかけられた。


「ねぇ?君、一人?」


 声の方を見ると、まだ少年と言っても良さそうな位の男性がテーブル席から私の方を見てニヤけた笑みを向けていた。


 いかにもチャラそうで好みではない。


「一緒に飲まない?一人なら良いよね?」


 そう言って私の腕を掴んでくる。


「いえ、一人で飲みたいから」


 そう言って掴まれた腕を振り払おうとしたけど、流石に男の方が力は強い。


「別にいいじゃん?彼氏でもいるの?」


 その言い方にムッとした時……。


「俺の連れに何か用?」


 響くような声と共に青い色が視界いっぱいに入ってきた。


 掴まれていた腕から手が離れている。


 私を庇う形で目の前に……あの彼が立っていた――。


「何だよ、彼氏いるのかよ。別に用って程でも……」


 言い淀む声と共にチャラ男が席を立ってどこかへ行っってしまった。


 それを見届けてから、勝気な笑顔を私に向けて彼が振り向く。


「大丈夫?」


 そうら聞かれた瞬間に……。


 私の運命の歯車が動き出して行った……。


ー夜を駆ける恋愛シミュレーション!!ー


ーあなたは彼を攻略出来る!?ー


【Night Dreamー蒼い閃光ー】


「あ、はい...大丈夫です」


 咄嗟に聞かれて、ありきたりな返事しか返せなかった。


 そんな私に笑顔のままで、彼は私を自分がいつも座っている奥の席へと促す。


「連れって言った以上は一緒にいないと、また絡まれるかもしれないから。君が嫌じゃなければ……だけど」


 勿論、嫌な筈がない。


 けど、これは私の秘密の事情。


「嫌じゃないです、助けてもらったお礼に……何か奢らせてください」


 照れながらそう言うと、彼はちょっとキザな表情をした。


「女性に奢らせるわけには行かないんだけど、絡まれずに済んで良かったって事で乾杯でもする?」


 その言葉に、席に着きながら2人で同時に笑ってしまった。


 彼お気に入りのシャンパンをオーダーしながら、他愛もない話で色々と盛り上がる。


 彼――彗(せい)さんはうさ瓶ランドの西区、ウエスト・ギア・ボロー住みで、仕事は濁していたけど公務員らしい。


 年も私と同じだった。


 気さくで話しやすく、色んな話題で私を楽しませてくれる。


 2人で過ごす楽しい時間はあっという間で、そろそろ帰らなければいけない。


「私そろそろ帰らないと……」


 もっと話していたいけれど、あまり遅いと一人で帰るのは怖い。


 渋々そう切り出すと、彗さんは頷いた。


「じゃあ……」


 そう言って自分も席を立つ。


「絡まれると危ないから送っていくよ、俺の家2ブロック先だし、途中までだけど」


「えっ!?」


 流石に驚いて声が出た


 私の反応に彼は一瞬驚いた後、頭をかきながら申し訳なさそうな顔をする。


「ごめん。俺、仕事柄こう言うの気にしないんだけど……いきなり初対面で送って行くは驚くよな……」


 困ったようなその表情が、勝気で精悍な顔立ちとのギャップで思わず素敵だと思ってしまう。


(どうしよう?本当は……)


ー送って行って欲しいー


 そう思って私は首を横に振った。


「あの……彗さんが嫌じゃなければ、送って行って……欲しいです」


 先程とは逆に私がそう言うと、彼は笑顔を返してくれた。


「じゃあ行こうか」


 言いながら私を出口へ促し、自分は後からそっと会計まで済ませてくれる。


(優しい!!)


 格好良くてユーモアセンスもあって……

 

ー彗さんが彼氏だったら良いのに……ー


 私は本気でそう思っでしまった。


「お待たせ。……ん?顔、赤くない?飲みすぎた?」


 心配する彗さんへ慌てて首を横に振る。


「い、いえ!なんでもないです」


 まさか、一目惚れです!格好良い!!とは言えない。

 

 そうして、店を出てからも2人でまた他愛もない話をしつつ……。


 家までの帰り道のひと時を……。


 私は幸福感に包まれながら彼と歩いて行った――。


 ーENDー

 

 

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