「光ある世界の絶望が終わりますように」

 この世界で権力を持つ魔女は、歌を聴くことが好きだった。

 この世界で力を振るう魔女は、歌の才能ある人が好きだった。


「いいよ、あなたの成功を約束してあげる」


 魔女は世界を旅して、無名の才ある人たちを探した。

 すべては、自分の欲求を満たすために。

 才ある人の歌を聴きたいという願いのために、魔女は旅を続ける。


「その代わり、あなたの人気と栄華は1年限り」


 魔女が出会った人たちは、大抵が成功を望んでいた。

 もちろん地位や名声のためではなく、歌が好きという感情を大切に歌を続けている人たちもいた。

 でも、魔女が自分の歌を聴きに来たとわかった瞬間、多くの歌い手たちは願った。

 自分が歌い手として成功することを。


「1年が経過した後も、あなたに幸福が残されているといいね」


 1年間限定で、世界中から必要とされる歌い手になることができる魔法。

 無名の才ある人たちは、魔女と秘密の取引をした。


「好きって気持ちに勝てるものなんてないのにね」


 今日も、夢追う人を探している。

 明日も、夢追う人を探す。

 それの繰り返し。

 そんな繰り返しの日々を、魔女は好んでいた。


「あの……!」


 ほら、今日も無名の才ある人がやってきた。


「どういったご用件でしょうか?」


 光ある世界に、闇が潜む。

 光ある世界を愛したからこそ、魔女は蔓延る絶望に手を伸ばした。

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