才色兼備のお姉ちゃんと凡人の私

椿かもめ

第1話 お姉ちゃん、風邪を引く

「ただいま〜」


「お姉ちゃん、お帰り。はい、そこで止まって」


 私は、玄関に仁王立ちでお姉ちゃんを出迎える。


「どうしたの?」


 お姉ちゃんは、困惑した顔をする。


「それはお姉ちゃんが一番分かってるでしょう」


 私はお姉ちゃんに近づき、右手でお姉ちゃんの額に手を当てる。


「今は微熱って感じかな。お姉ちゃん、荷物ちょうだい」


 荷物を受け取るために、右手を出す。


「これぐらい大丈夫よ」


 と、ニコッと笑いながら靴を脱ぐ。


「いつもの事なんだから、いい加減慣れてよね」


 私は、お姉ちゃんから荷物を奪い取る。


「リビングのテーブルの上に体温計置いてあるから、熱測ってよ」


 と、言い、私は玄関からお姉ちゃんの部屋に向かった。


 荷物を置いてリビングに行くと、お姉ちゃんはリビングではなくキッチンで冷蔵庫

を開けていた。


「お姉ちゃん、何やってるの!」


「晩御飯の準備よ。美咲ちゃんも手伝ってくれる?」


「手伝ってくれる?じゃないわよ!私、お姉ちゃんに晩御飯の準備してなんて言ってないよね!」


「でも……」


「でももヘチマもありません!いいから熱を測る!」


「分かったわ」


 冷蔵庫を閉め、お姉ちゃんは渋々、熱を測りにリビングに向かう。


 20秒程で、ピピピと音が鳴る。


 お姉ちゃんから体温計を受け取り、体温を確認する。


「37.7℃ね。お姉ちゃんは、部屋に行ってパジャマに着替えて」


「そんな大袈裟にしなくても……」


「いいから、私の言うことを聞いて!」


「分かったわ」


 お姉ちゃんは、これ以上言ったところで無駄だと判断したのか、リビングを出ていった。


「まったく……さて、看病の準備をないと」


 私は、これから始まる戦いに向けて気合を入れ直す。


 氷枕と経口補水液を持って、お姉ちゃんの部屋に入ると、お姉ちゃんはベッドの上

にパジャマに着替え、少しぼーとした感じで座っていた。


「水枕と経口補水液持ってきたよ」


「美咲ちゃん、ありがとう」


「寝る前に一口飲む?」


「そうね。一口貰うわ」


 私は、水枕を一旦ベッドの上に置き、ペットボトルのキャップを開けて、お姉ちゃんに渡す。


 お姉ちゃんが飲んでいる間に、枕を水枕に替え、枕は学習机の上に置く。


「美咲ちゃん」


 お姉ちゃんは、私にペットボトルを差し出す。


 私はそれを受け取る。


「それじゃ、横になって。寒かったりする?」


 と、ペットボトルの蓋を締めながら聞く。


「今のところは大丈夫よ」


 お姉ちゃんは、ベッドに入り仰向けになる。


 クローゼットを開けて、ミニテーブルを取り出す。


 テーブルをベッドの横に置いて、その上にペットボトルを置く。


「飲み物ここに置いたからね」


「うん」


「今が16時半だから19時ぐらいに見に来るね」


「分かったわ」


「それじゃ、おやすみ」


 と、言い、部屋を出てリビングに向かった。

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才色兼備のお姉ちゃんと凡人の私 椿かもめ @kamome_tsubaki

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