アウシュビッツの少年へ。
加賀圏
アウシュビッツの少年へ
僕はどこかおかしいのではないか。テレビの前でゴロゴロしながらそんなことを考えていた。最近の私の学校での呼び名は、「アウシュ」だ。4か月前に、歴史の授業で「アウシュビッツ」についてを習ってからクラスのやつらみんなにそう言われている。確かに、痩せているかもしれないし、弱気で反抗の意思もない、細かいことや小さいことに囚われるタイプで、きっと一緒にいて面白くないんだろうなと思う。でも同時に僕はアウシュビッツの人たちよりいい環境にいるのに、こんなにつまらない人間なんだから、逆にアウシュビッツの人たちに失礼だとも思った。
「いい加減宿題やりなさいよ!冬休み、あと5日しかないんだからね。」母の声には、少し張りがあった。
「だーかーらー、見つからないんだって!」
「まだ見つからないの?しょうがない子ね...」
正直言って、ウザい。俺をバカにしてくるやつも、ババァも、なにしろ一番気に入らないのは外面は良くして家の中とか、そういう見えない所で嫌な妄想したり親をうざがったりする、自分のことは棚に置いて相手を批判するような、自分みたいなやつが、一番嫌いだ。
「ちょっと俺、出かけるよ。」
「気を付けてね、7時までには帰るのよ!」
…2時間半か、悪くない。カードショップでも見に行こう。
「…よォ、奇遇だな。お前もポテカやるのか。」
通り過ぎようとしていたポテカコーナーから急に声をかけられたので、驚いた。いや、最悪というべきだろうか。よりにもよって「アウシュ」呼びを広めたやつに鉢合うとは。まぁ関係ない、適当に誤魔化してカードを触りに行こう。
「こ、こんにちは。僕はデレマしに来たんだ。ポテカもたまにやるから、もしよかったら今度やろうね!」まぁ、今度は来ないけどね。
「…ほーん、デレマ高くね?俺ビンボーだから手が出せねぇわ。」デレマへの感想がそれだけのはイラついたが、だからと言って手が出るわけでもないので、無視してカードコーナーへ直行した。
さて、私の楽しみと言えば、カードのストレージコーナーで、いつもより安い商品を買うことだ。別にそのデッキを組むわけでもない。ただ何故か、無駄な買い物をしているだけなのに「安く買えた!」と誤認して幸福感を得てしまうのだ。なかなかやめられないぞ…
「おい。」
「うおっ!」不意な声にびっくりしてカードを落としてしまった
「あちゃー、ごめんな。」そう言いながら、彼はせっせと集めて渡してくれた。
「あの、ありがとう。じゃ、うち晩御飯だから…」話しかけてくるのかよ…
「あのさ、ポテカするんだよな?」
「え?あ、うん。やるよ」
「じゃーさ、明日15時にここ集合な。遊ぼうぜ」
「え、いや、僕弱いから…」いや、なんでだよ、俺みたいなやつ誘うなよ…
「関係ねぇ、来い!」
まったく、とんでもない迷惑なやつだったな…そういえば、同級生と遊ぶのは何年ぶりだろう。「本当は別のことしたいんだけどなぁ…」帰路につきながら、そんな考えを持っている僕の頭は、多分ちょっとだけワクワクしてた。
アウシュビッツの少年へ。 加賀圏 @KaGaken_0203
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。アウシュビッツの少年へ。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます