過去の記憶
「で、あなた誰よ?」
「茉莉、警戒しなくても大丈夫だよ」
テーブル越しに座るエッジが
彼の頭上にある壁掛け時計をチラ見すると0時25分を指している。再びエッジに視線を戻す。鎖骨の辺りまで伸びている豊かな金髪は、どちらかというと
この屈託のなさに警戒感を削がれてしまったのか、気づいたら私は彼を部屋に入れていた。今更ながら後悔している。
「あー、日本の緑茶は初めて飲んだけど、なんだか落ち着くね」
エッジが両手を後について一息ついた。まあ今は4月ではあるけど、まだお茶が美味しい季節――って、ちょっと待て! エッジに心を許しそうになっている。油断してはいけない。いざとなれば、背中に忍ばせているパン切り包丁で――。
「感情豊かな
「えっ?」
エッジが視線を合わせてきて片方の口元を上げた。
「茉莉の国のトップが掲げたスローガンだよ。世界が涙を失ってから、もう15年が経っていることは君も知っているよね」
――涙。
気安く名まえを呼ぶなと思う中、エッジが今の世界や日本の状況を語り出した。
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