第5話 千尋は神と共に生きると決めた

 そんなことを考えていると、ふと村木兄さんの言葉が胸をよぎった。

 オレの好きな聖書の御言葉に

「この世には悩みがある。しかし、私はこの世に勝っている」(聖書)

「正しい人が正しい生活をしなくなり、罪を犯し、そのために死ぬのであれば、彼は自分の罪のために死ぬに過ぎない。

 ところが、罪を犯した者であっても、自分のしてきた罪を離れ、公正と正義を行うなら、彼は自分の命を救うことができる。

 彼は自分を反省して、そのすべての罪を離れたのだから、死ぬことはなく、必ず生きる」(エゼキエル18:26-28現代訳聖書)

 なあ、千尋ちゃん。人間は皆罪人であるなんて言ったら怒るだろう。

 もちろん千尋は、けげんな顔つきで言った。

「だって、私今まで犯罪を犯したこともないし、なぜ罪人なのかな?」

 村木は答えた。

「この場合の罪というのは、エゴイズムのことだよ。

 人間にエゴイズムがある限り、罪を犯す危険性は誰でもある。

 戦争も、国家間の利害が不一致になったときにおこるものであるが、もとはといえばやはり人間のエゴイズムが原因だ。

 だから今でも、世界中に戦争がおこっているだろう。

 しかし、人間の罪の身代わりに十字架に架かって下さったのが、イエスキリストなんだよ」

 千尋は思い出したように答えた。

「そういえば、十字架は処刑道具だというわね。残虐なはずの処刑道具が、救いのシンボルになったのね」

 ふと千尋は、神様のことを知りたくなってきた。

 そして神様と一緒なら、どんなに世の中が変わろうと生きていけると思った。

 

 これからどんなことが起こるか、誰にも予測できない。

 AIロボットは情報過多で、流暢なしゃべりをし、悩みの相談に乗ってくれたり、塾代わりに勉強を教えてくれたり、旅行のプランまで練ってくれたりするという。

 しかしそれを選択し、判断するのは人間でしかない。

 千尋は、神様を知ることこそが、有意義な情報であると確信していた。


 空を見上げると、今まで太陽が射し込んでいたのに、急にグレーな雲が覆っている。

 今までの千尋は、不安感を感じたものだが、今はなぜかそうでもない。

 私には神様がついている。そう確信したときから強く生きられそうだった。


   完







 

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顔面リハビリメイクとアカデミッククラブふたば家 すどう零 @kisamatuma

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