第45話 リリ様のために2
リリファンクラブ、活動報告2
ロゼリア王都から、リリの故郷である辺境の森へと続く道中。
リリとミーナ、そして聖女のフローラや護衛騎士たち一行は、賑やかに旅を続けていました。
「ねえ、リリ! あの花、とっても綺麗だね!」
「うん! ミーナちゃんも、森の中の動物さんたちと、きっと仲良くなれるよ!」
ミーナは、初めての森の道に、目を輝かせていました。
その頃、一行から少し離れた森の木陰で、数人の男たちが話し合っていました。彼らは、秘密結社リリファンクラブの一員である、元盗賊のグレンたちでした。
「団長、あそこにいるのが、噂の自称勇者セオドアですぜ」
「ああ、間違いない。ゴードン様を訪ねて、聖剣を無理に作らせようとした、不届き者だ」
グレンは、厳しい表情で言いました。
「リリ様の故郷に、あんな輩を近づかせるわけにはいかない。しかも、リリ様は、今、あの道を通る」
リリが旅に出ることは、すでに彼らリリファンクラブのネットワークを通じて、知らされていました。
「よし、みんな! リリ様のため、総員、任務開始!」
グレンが指示を出すと、元盗賊たちは、一斉に森の奥へと消えていきました。
その頃、リリたちの進行方向の少し先で、セオドアは、一人、苛立っていました。
「くそっ! あの老いぼれ鍛冶師め、俺の才能を認めないばかりか、聖剣も作らないとは……!」
セオドアは、ゴードンへの怒りが収まらず、イライラしながら、道端の草を蹴っていました。
ちなみにゴードンは、種族が違う為年寄りに見えるが実は意外に若い、種族的には、壮年にもいっていないのであった。おじいさんではなく、おじさんであった。
その時、突然、彼の前に、リリファンクラブのメンバーが、複数人現れました。
「おや、どちら様かな? ここは、少し道が荒れているようだが……」
メンバーの一人が、にこやかに話しかけます。
「なんだ、お前たちは? 俺は、この国を救う真の勇者、セオドアだ! 邪魔をするなら、容赦はしないぞ!」
セオドアは、傲慢に言い放ちました。
「勇者様が、こんな場所で何をしているのかな? ……まさか、善良な旅人を襲おうとでも?」
メンバーたちは、セオドアを揶揄するように言いました。
「なっ! 無礼者め! この俺が、そんなことをするわけが……!」
セオドアは、怒りのあまり剣を抜こうとしましたが、その瞬間、彼の腕は、後ろから現れた別のメンバーによって、がっちりと押さえ込まれていました。
「悪いが、勇者様。ここは、君のような人間が通っていい場所ではないんだ」
「何を言っている!? 放せ、この!」
セオドアが暴れると、メンバーたちは、彼を森の奥へと引きずっていきました。
「君は、少し頭を冷やした方がいい。そして、リリ様が、どれだけ素晴らしいお方か、よく反省するんだな」
「リリ様だと!? 一体何の……!?」
セオドアは、抵抗しましたが、多勢に無勢。結局、彼は、リリたちに会うことなく、森の奥へと連れ去られていきました。
リリたちは、セオドアがいた場所を、何事もなく通り過ぎていきました。
「どうしたの、リル? なんだか、元気がないみたいだね?」
リリは、突然立ち止まったリルに、不思議そうに話しかけました。
「クゥーン……」
リルは、リリに心配をかけまいと、何も言わずに、再び歩き始めました。
その頃、森の奥では、リリファンクラブのメンバーたちが、セオドアに、リリの「魔法」の素晴らしさを、延々と語っていました。
「あのスープは、本当に神の味でな……」
「リリ様の笑顔は、世界を救うんだ……」
セオドアは、彼らの熱弁に、辟易とした表情を浮かべながらも、リリという存在への興味を、ますます募らせていくのでした。しかし、それはリリを慕う者達からの刷り込みで、リリへの尊敬と畏敬に昇華していくのでした。
彼は、いつかまた、リリの前に現れるかもしれません。そして、その時も、彼は懲りないかもしれませんね。
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