第34話 夜会って疲れちゃうんだね。
園遊会から夜会へ
昼食会が終わって、ユリウス殿下とミーナちゃん、それにエレノア様と一緒に、王宮の中にある控えのお部屋に戻ったの。
「リリ様、今度こそ! このドレスにお着替えを!」
エミリーが、さっきのとは違う、真っ赤でとっても豪華なドレスを持って待ち構えてます。逃げようとしても、背後は、ミーナちゃんの侍女さんに抑えられてる。あぁ、もう抵抗する体力なんて残ってないや。わたしは素直に着替えさせられます。
「わぁ! リリ、とっても似合ってるわ!」ってミーナちゃんが目をキラキラさせてくれました。嬉しいな。
「リリ、今日の夜会では、たくさんの人が君に会いたがっている。覚悟しておいてくれ」
ユリウス殿下が真剣な顔で言うから、多分、今わたしの顔はひきつってるね。また、いっぱい挨拶しなくちゃいけないんだ…。
夜会が始まってしまった、ユリウス殿下たちとトボトボと会場へ向かいました。昼間とは全然違って、キラキラした光がいっぱいで、なんだかおとぎ話みたいで綺麗な、大広間。
ユリウス殿下やミーナちゃんと一緒に、大広間に入るんだけど、必然的に王様と王妃様も一緒って、わたし平民なんだけどいいのかな?
と思っているうちに、音楽隊の荘厳な音楽を背景に、扉が開いたよ。
王様の挨拶の後に、わたしが紹介されたよ。
「まあ、あの方が……」
「なんと可憐な……!」
みんながざわざわ。みんながわたしを見てるのかな?
あう、恥ずかしヨゥ
「リリ殿、ようこそ我が国へ!」
王様が、そう言って紹介を締め括ったよ。
みんながこっち見て拍手しているんだ、わたしの顔が真っ赤になるのがわかるよ。
「まぁ、見て、初々しいわね」
「ほんと、可愛らしい方だわ、ぜひ、娘とも懇意にして欲しいわ」
それからは、次から次へと貴族の方たちが挨拶に来てくれるんだけど、みんなが話すのは、わたしの魔法とか、才能のことばっかり。
「リリ様、よろしければ、我が家にもいらして、ご教授願えませんか?」って、わたし、先生じゃないんだけどな。
「我が家にも、不治の病の者がおりまして……」
わたしは、にこにこしながら「はい、はい」って答えてたけど、少しずつ疲れちゃいました。わたしは、ただみんなが元気になることを願って魔法を使ってるだけで、別に特別なことだとは思ってないから、そんなに褒められても困っちゃうんだ。
「リリ殿は、現在我が国のお客人として、王宮にいらっしゃる、リリ殿の治療を望むのであれば、王宮を通してください」
ユリウス殿下がそう言ってくれたよ。
そんなとき、見たことのないご夫婦がわたしの前に来ました。誰だろう?
「リリ様、息子が学園でお世話になっているようで」って、お父様が丁寧にお辞儀をしました。
「ええ。息子が教科書をなくしてしまいまして、ご迷惑をおかけしました……」って、お母様も申し訳なさそうに言うの。
わたしは、二人の顔をじーっと見て、ちょっとだけ眉をひそめました。
「……あの、教科書は、わたしが無くしたわけじゃないんですけど……」
わたしの言葉に、ご夫婦の顔がピシッとこわばったのがわかった。
「え……?」
「毎日、教科書がなくなったり、筆箱が空っぽになったりするんですけど、それって、わたしが悪いんですか?」
わたしが不思議そうな顔でそう尋ねると、ご夫婦はまさかこんなところでわたしがストレートに文句を言うなんて思ってなかったみたいで、顔が真っ青になって、何も言えなくなっちゃった。
「い、いえ、滅相もございません……! それは、息子が……」って、お父様が慌てて何か言おうとしたけど、わたしはにっこり笑って言いました。
「でも、大丈夫です! わたし、アイテムボックスにいっぱい予備があるから!」
わたしの言葉に、ご夫婦はホッとしたみたいだけど、同時に、わたしがとんでもない魔法使いだってことを改めて思い出したみたい。もう二度と、わたしに意地悪しないって心の中で誓ってるのが、なんとなくわかったよ。
ユリウス様のお菓子を楽しみに
夜会もそろそろ終わる頃、ユリウス様がわたしのそばに来てくれました。
「リリ、大丈夫か? もう、疲れただろう」
「うん……。みんな、優しいけど、なんだか、魔法のことばかり聞くから、ちょっと、疲れちゃった……」
わたしは、素直に答えました。
ユリウス様は、わたしの頭を優しく撫でてくれました。大きな手で包まれるみたいで、すごく安心するの。
「もうすぐ終わる。終わったら、僕が作ったお菓子を、一緒に食べよう」
「わぁ! やった! ユリウス王子が作ったお菓子、楽しみ!」
ユリウス様の言葉を聞いたら、わたしの顔はまたパァっと明るい笑顔になりました。疲れなんて、あっという間にどこかへ行っちゃったみたい!
わたしは、ただ魔法を使うのが楽しくて、みんなが笑ってくれたら嬉しいだけなのに、どうしてこんなに大騒ぎになっちゃうんだろう?
でも、ユリウス様とのお菓子のためにも、あと少し、頑張らなくちゃね!
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