第17話 初めての王都だよ。

ユリウス王子様の「着いたぞ!」という声に顔を上げると、目の前には巨大な門がそびえ立っているよ。

天に届くんじゃないかってくらい大きい門だよ。

ちょっと、首が痛くなっちゃう。


「わぁ! すごい! とってもおっきいね!」


あんまり見上げすぎて、ゴードンさんが買ってくれた新しい帽子が落ちそうになったよ。ついでに、わたしものけぞりすぎて、リルから落ちそうになっちゃった。てへへ。


ガブリエルさんが門の所にいる兵士さんと話をしているみたい。

時々、殿下とか、ミーナ王女とか薬師とか聞こえるね。


「森の木々みたいに高い建物がいっぱいだ! あれが、お店ってやつかな?」

少し、開いた門の隙間から見える街並み。

人もいっぱいだよ。

もう興奮で心臓がドキドキする。ガブリエルさんに「ははは」と笑われたけど、だってこんなの初めてだもん! リルに乗ったまま門をくぐろうとすると、門番さんが慌てて私たちを止めたんだよ。


「大きな魔獣を連れての入城は……ちょっと」

「リルは友達だよ。」


その時、ユリウス王子が前に出てくれたよ。

「彼女は私の同行者。そして、この魔獣は、彼女の従魔だ」

ユリウス王子様の言葉に、門番さんたちは慌てて姿勢を正す。

すごいね、ほんとに王子様って。


「で、殿下! 大変失礼いたしました!しかしながら、魔獣を王都に入れるのは」 

「ただの魔獣じゃない、聖獣のフェンリルだ。お前は聖獣の機嫌をそこねたいのか?」

「せ、聖獣!」

え?リルって聖獣だったの?

わたしも初耳だったよ。


でも、リルはリルだよね。

撫でてあげたよ。


どうにか、兵士さんを説得できたみたい。門が大きく開かれ、私とリル、ガブリエルさん、そしてユリウス王子様は、ついに王都の中へ足を踏み入れた。


「わぁ! 人がいっぱいだ! みんな、美味しそうなにおいもするね。」


なんかみんなに注目されてる?


兵隊さんが前後に付いてくれたよ。

念の為だって、そうだね。王子様に何かあったら大変だもんね。


「いや、たぶんリル殿を警戒して」

え?リルは大人しいよ?いい子だよ。


通りの両側には、見たことのないものがずらりと並んでいる。


「あっちでは、パンを焼いてる匂いがする! こっちでは、お花がいっぱい!」


初めて見る物でいっぱいだよ。

「ねね、ユリウス様。あれは何?」

「あれはパンだな」

「え?あのパン丸くないよ?」

「バケットっていう、長いパンなんだよ」

「ふぇぇ〜〜」

村でおパンといえば、丸くて硬いパンなんだけど。その他にも渦巻いた奴やら、色々あるんだよ。すごいね。


ユリウス王子様は、私の質問に嫌がらずに答えてくれたよ。

 あ、あっちでは綺麗な布を売っている。すごい! あれで魔法使いのローブを作ったら、どんな模様になるんだろう?


「あれが気に入ったのか?」

「うん、あの布で作ったローブがかっこいいね」

「よし、あの店でリリの服を作ろう」

「へ、いいよ私はいまのままでも」

「いずれ、父上に謁見するのに今の服ってわけにはいかないからさ」


とにかく服をつくることになったよ。そんなに気にしなくてもいいのにね。


それから、また街を歩いたよ。王城に着くまで、いろいろ質問しちゃった。」

ガブリエルさんが「リリ様にとっては、全てが新鮮なのでしょうな」

と優しく言ってくれる。

そうだよ、全部が新鮮で、キラキラしている。


みんな、笑顔だ。いい国なんだね。

ミーナ様はどんな人かな?

ミーナ様を助けられるといいな。私の胸は、新しい世界への期待でいっぱいだった。

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