第2話 森の中の鍛治師
こんにちはリリです。森の奥で、生活魔法を駆使して自給自足の生活を始めました。
枯れ木を集め、『プチファイア』で火を起こし、『ウォーター・クリエイト』で水を出して、『ウィンドウ・カッター』で木を切り、『ハウスクリエイト』で簡単な小屋まで作る。
「生活魔法レベルMAX」はチョー便利です。
でも、たった10歳の女の子が一人で暮らすのは、やっぱり大変なこともあります。
そんな時です、森の奥から規則的な金属音が聞こえてきました。
トントン、カキン、と繰り返される音。これは、金属を叩く音
私は、音のする方へと歩いていきました。
たどり着いた先にあったのは、古びた、でも頑丈そうな鍛冶小屋。中から聞こえるのは、鉄を叩く音。煙突からは煙があがっています。
扉を叩くと、中から出てきたのは、無骨な顔立ちをした大柄な男の人でした。
「こんな森の奥で、お前のような子供が一体何をしている?」
「森に捨てられました、助けてください」
「おれは、ゴードン。ここで鍛治をやっている」
「リリといいます。生活魔法士です」
私は、召喚されたらしいこと、前の記憶は持ってなくて、戦闘系の魔法を使えなかったら、森に捨てられた事を正直に話しました。
ゴードンさん黙って私の話を聞いていました。でも、「生活魔法レベルMAX」という言葉を聞いた瞬間、その眉をピクリと動かしました。
「ほう。レベルマックスだと?なんだそれは?魔法にレベルなんてあるのか?」
えっと、レベルの概念がないんでしょうか?
「えって、レベルっていうのは、習得率って言うかど成長の度合いって言うかそんな感じです」
「よくわからんが、おまえさんは、生活魔法の習得がマックスまでいってるってことか、面白いな。お前のような子供が、生活魔法とは言え、熟練者とはな」
ゴードンさんは私に意外な提案をしてくれました。
「まぁ、おれも一人で退屈していた所だ。この小屋に住んでいいぞ。ただし、飯は自分で作れ。あと、たまには手伝え」
私は目を輝かせました。
「はい! ありがとうございます!」
こうして私は、ゴードンさんの鍛冶小屋に住むことになりました。
口数が少ないゴードンさんだけど、私の生活魔法で作った美味しい料理を食べると、毎回満足そうな顔をしてくれます。
私も、ゴードンさんのぶっきらぼうだけど優しい気遣いに触れて、少しずつ、この異世界での居場所を見つけていくのでした。
鍛冶小屋の傍らで、私は生活魔法を使って洗濯物を干します。
青空の下、風に揺れる真っ白な洗濯物を見ながら、私は心の中で静かに笑いました。
ここが、私の新しい居場所なんだ、って。
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