愛せない僕への愛歌(ラブソング)
広川 海未
愛せない僕への愛歌(ラブソング)
「俺、君がs…この夏!伝説の恋愛番組が帰ってきた!好評配信中!」
まったくうるさいCMだ。それでも復活って事はみんなが求めているんだろう。僕はこんな番組なんぞ見たくないし、見ない。現実でも愛だの恋だのは嫌いだ。僕は猫を愛しているが人を愛するという事とは違う種類の愛なんだと思う。たぶん、いや絶対そう。だから人を愛する恋するなんてできない。
そんなこと言う僕にも昔は彼女がいた。彼女は歌がうまくて頭も良かった。目は希望に溢れていて輝いていた。
『来週空いてる?空いてたら遊ぼう!』
そうメッセージしても帰って来るのは
『忙しいからごめん』
忙しいって何?と当時は分からなかったが今に思えば作文の代表やらいろいろあったんだろう。それを僕は理解してやれなかった。
となるともちろん不満が溜まる。別れた方が要らぬ心配をお互いにしなくて済むと思った。(無論向こうが心配していたかは分からないが)
そしてしばらくしてメッセージも来ない。僕も送らない。つまりどうなったか?簡単である。「別れた」のだ。
音信不通となり噂で聞いたときがあった。
「あーバンドとかやってて結構良かったんだけど、学校でなんかいじめられてたらしいよ。それでね。学校を辞めちゃったみたい」
だそうだ。はっきり言うと頭が良い人をいじめるようなやつはゴミだ。人ではない。だから燃やしてしまった方がよっぽど役に立つ。
そして数年が経ち、僕は25歳になり社会人になった。
仕事から帰りテレビをつけると聞き覚えのある声がする。
「うふふ、ええ」
司会のおっちゃんと話している。
「なんでこういう曲書けたの?」
「私は中学生の時好きだった人が忘れられなくて、それ以来ずっと付き合ってないんですよ。まぁ未練ってやつから出来た曲ですね。」
するとアナウンサーが
「あっ準備できたそうです!ではお願いします。」
「はい」
その人は席を立ちギターを手にするとアナウンサーが曲名を言った。
「黒井 愛さんで、愛せない君への愛歌(ラブソング)です。どうぞ」
僕は一目で誰だか分かった。彼女だ。あぁ君は成功しているじゃあないか。しかも君の得意な歌で。ずっと心配してた訳じゃないがそれでもやっぱり成功した同級生を見るのはなんとも嬉しい。
歌詞はまったく僕を歌っているようだ。暗い歌詞だがキャッチーなメロディーと早めのテンポが暗い歌詞を感じさせない。きっとバラードだったらこんなに売れて売れてはいないだろう。君というのは僕の事だろう。自意識過剰かもしれない。けど思うだけ自由だから別に良かろう。
最後に彼女はこう言った。「この曲は言い換えれば『愛せない僕への愛歌(ラブソング)』なんです。愛せなくてもいい。でも私は君に恋していたのは事実なんだ。またどこかで。」
外は大雨が降っていた。玄関のチャイムが鳴った。
愛せない僕への愛歌(ラブソング) 広川 海未 @umihirokawa
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