バ美肉おばさんは話を聞く③
対談当日に現れたのは、経済誌のインタビュー記事で見たよりも穏やかそうな人だ。
物腰も柔らかく、見た目で判断してしまうのも良くないけど、あんなスプラッタホラーゲームを作るような人には見えない。
私と同じくらいの年齢のはずなんだけど、落ち着き具合に天と地ほどの差があるように感じる。もちろん私が落ち着きがない方だ。
社長さんは顔出しOKとのことなので、私はVに受肉してライブ対談を始めた。
「すみません。時間がなくてアナタの動画は最新の実況プレイしか観てないんです」
「実況動画って観ないんですか?」
「えぇ、あまり……観るよりもプレイしたい方ですので」
「えっと……どうでした、感想聞いてもいいですか?」
「まだ、50周しかしてないんだなぁ、と」
「しか⁉︎」
思わず叫んでしまった。
50周でもやってる方だよ。
「社長さんは何周してるんですか?」
「ハードの制限で1日4時間しかできないじゃないですか。まだ309周しかできてないんですよ」
ヒュッと息を呑んだ。
一応あのゲームの実況を見てくれている人達が見にきてくれているので、あのゲームがどんなのか知っている人が多い。
あのホラーゲーを300周もやってんの⁉︎それも自分で作ったやつを?
コメント欄が「⁉︎⁉︎」「は???」「こわ」で埋められた。
「制限がなければ、ずっとあのゲームをプレイしていたいくらいですよ」
嘘を見抜けるほど人生経験を積んでいないけど、これ……本音にしか聞こえない。
「えっと……何周するとクリアになるんですか?」
ていうか、300周以上やってもクリアできないって……もしかして周回するだけのゲームなの?
「クリアするだけなら周回は必要ないですよ。それとは別に周回も進めてるだけで」
今度はコメント欄が?だらけになった。
クリアできるのに周回する意味がわからない。
「クリアできるんですか、あれ⁉︎」
「もちろんです。一周目のゲームスタート直後にクリアもできますよ」
?????意味不明だ。
すぐにクリアできるのになんで周回してんの?この人。
「そ、それじゃあ……その、後でクリアするところ見せてもらってもいいですか?」
「いいですよ。発売してから一年経ちますからね。ネタバレとか言う人もいないでしょう」
社長さんはにこりと微笑んで頷いた。
クリアできるんなら見せて欲しいもんね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます