平凡JDは乙女ゲームをプレイする⑤

本来ならクライマックスのイベント。

竜が私たちが住んでいる王都を襲うというものだ。

勝ちイベントなのでイベントが失敗してしまうなんていうバッドエンドはない。

好きなイベントランキングをすれば上位にくるイベントだろう。

甘く優しい世界に、ほんの少し加えられたスパイスがこの竜害というイベントだ。

本来なら仲間と力を合わせて愛と勇気と友情の魔法で竜を退治して王都を守る。

どんなに恥ずかしい魔法を叫んでも、どんなに恥ずかしいポーズをしても、ソロゲーだから誰にも見られないから恥ずかしくないのだ。

イケメンたちに甘やかされてテンション爆上がりしてると、本当にノリノリでできてしまうのだ。


ところがこのイベントもフレデリカが破壊していた。

一応、イケメンたちと現場に向かったさ。でも今の私には愛も勇気も友情もない。どう考えても竜に蹂躙される以外の結末が思い浮かばない。

もしかしてバッドエンド?そんなエンディングなんて存在しないはずなのに。

するとフレデリカに「邪魔」と言われ突き飛ばされた。彼女は魔法を使い竜を地面に落とすと、剣でバラバラに切り刻んだ。当たり前のことをしたかのように、静かに現れ静かに立ち去った。

なんであんなに強いの?あんなに強いキャラに恨まれてんの?


精神的に死ぬほど辛い日々を乗り越えて、最終イベントの日だ。


フレデリカが断罪されるのだけど……あのフレデリカが本当に断罪されておとなしく受け入れるのか?

私はできるだけ穏便に済ませたいと思うようになっていた。

イベントクラッシャーのフレデリカが大人しくしているはずがない。

できれば断罪イベント自体を起こしたくないくらいだ。

いつもの大人しいフレデリカはいない。


当然のように断罪イベントが始まった。

私は隣に立つ王子様に「フレデリカ様は何もしていません」と縋りついた。


「フレデリカを庇う必要なんてないんだよ」


優しい顔で私を見つめてきた。庇ってんじゃないから。事実だから。

フレデリカを見ると、表情がすっぽりと抜け落ちていた。


終わった。それが確信できた。

主人公死亡エンドなんてこんな乙女ゲーであり得るの⁉︎

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