僕と彼女たちの異世界奮闘記

烏賊墨

異世界移転!?

第1話 ここはどこ?①

​「はぁ〜、疲れたぁ〜」

​残業帰りの電車の中、僕はスマホを取り出した。揺れる車内で、吊り革に掴まる人々の間を縫うようにして画面を覗き込む。


​「さて、やりますか」

​そう呟いて、僕は『オリジナル・ガーディアンズ』を開いた。このゲームは、いわゆるタワーディフェンス系のソーシャルゲームだ。だが、その名の通り、自陣営の登場キャラクターが基本AIの自動作成で、世界に一つしかない唯一無二の存在となる。自分だけのキャラたちを育て、戦うという部分が気に入って、なんだかんだとサービス開始からずっと続けている。


​「ツバキはいつ見ても凛々しくて美人だなぁ」

​日替わりで召喚されるキャラの中から、契約チケットというアイテムを消費して契約することで、初めてキャラとして入手できる。

では、契約チケットを使わなかったキャラたちは?

そのまま消えてしまう。取り置きなんてシステムはない。本当に一期一会なのだ。

最初の頃はよくわからずに片っ端から契約していたが、チケットがイベントやガチャで稀にしか手に入らないと知ってからは、厳選するようになった。ツバキもその厳選キャラだ。厳選ポイントに占める見た目比率が高いのは、些細なことである。


​まずは探索に出したキャラたちを回収して、再探索に出さなければ。僕は画面をスワイプする。

​「おっ!レア素材が10個もある!」

​これをミコトの専用武器作成に回そうか、それとも他のキャラの装備を強化するか。悩んでいると、突然、電車のアナウンスが流れた。

​「この地域に大雨警報及び土砂災害警報が出たため、この電車は次の駅に到着した後、運転を見合わせることと致しました。お客様にはお急ぎの所ご迷惑をおかけ致します。」

​車内がざわつき、人々がスマホで情報を検索し始めた。

​困ったな。このまま次の駅で運転再開を待つか、それとも他の帰宅手段を探すか。いっそ近くのホテルで一泊するか?そんなことを考えながら、デイリークエストの報酬を回収する。もはや生活の一部と化した日課をこなしていく。クエストで貰えるガチャが10連分貯まっていたので、僕は迷うことなくガチャを回した。


​「んっ!?」

​ごく稀にしか出ない契約チケットが2枚も!これはすごい。

​「今日はこれで運を使い切ったのか……」

​静かに湧き上がる嬉しさを抑えきれず、顔がニヤける。端から見たら、きっと変人に見えただろう。


​「おい、何か変な音が聞こえないか?」

​そんな声が耳に入ってきた。なんだろうとスマホから顔を上げると、いきなり電車が大きく揺れた。立っていた僕はバランスを崩し、目の前が真っ白になる。

​その後の記憶はない。


​「ますたぁ」

​なにか聞こえる気がする……。とても心地よくて、懐かしい響きだ。

​「マスター!大丈夫ですか!?」

​今度ははっきりと聞こえた。僕はゆっくりと目を開ける。

​そこに立っていたのは、見慣れた、いや、見覚えのある少女たちだった。

​「えっ!なに!?」

​思わず大きな声を出してしまう。目の前の少女は少し驚いた顔をした後、安堵の表情を見せた。

​「マスター、お目覚めになられましたか!?」

​声の主を見ると、そこには見覚えのある姿があった。この顔は……。

​「ミリア……?」

​「はい、ミリアです!マスター、大丈夫ですか?」

​そう答える少女に対して、僕は「あ、う、うん。大丈夫……」としか言えなかった。

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