最強の賢者と言われてますが中身は凡人です

@nomuneco

第1話 前世の記憶

キンコンカンコーン

「さようならー」

「つばきちゃんまたね」

「ななちゃんばいばーい」

「さきちゃん一緒に帰ろー」

「けん家でゲームしようぜ」

終礼のチャイムと共に教室からぞろぞろと下駄箱へと元気な声が遠のいていく。


はぁ…。

しんとした教室にやけに大きなため息を落とす私は河野優子。小学校5年生の割には落ち着いてるねーと大人に言われるこれは社交辞令。同級生も大人も本音は「暗くて何考えてるかわからない怖い子」なのだそう。

正直どうして自分がこんな性格なのか当の本人でもわからない。

両親は別居中で母と二人暮し、その母も仕事が忙しく夜寝る頃に帰ってくればいい方だ。

学校でも家でもひとりぼっち。

友達がいない私だけど意外にもそんな日常でも満足していた。

(今日何食べようかなぁ)

小5の私の楽しみと言えば毎日母が置いていってくれている1000円でどれだけ贅沢をするかなのだ。


帰宅するとスーパーかコンビニで夕飯と余裕があればお菓子を買い帰宅。

誰もいないリビングで録画していたアニメをつけ宿題をする。明日の教科書と持ち物を準備したら買ってきたもので夕食の時間。お風呂に入って眠くなるまでゲーム。これが大体のルーティン。

寝る前には大抵母も帰ってくるし、宿題さえすれば好きにアニメやゲームをしてもいいという我が家のルールも気に入っている。週末は旅行好きの母とその友達と遠出をしたりすることもあり意外にも寂しさや孤独感はない。


今日はハンバーグ乗ったお弁当にしようかなぁ…。

いつものスーパーで夕飯を物色中

「あ…」

(漆黒の消防団新刊でてる…)

616円(税込)

最近はまって読んでいる漫画の単行本だ。

これを買ってしまったら今日は貧乏飯だT_T

さぁどうする。

(おにぎり2個と漫画本にしよう。楽しみだなぁ)

ほんの少しオーバーしたけど、以前余った分がいくらかあったので買えた。


(今日宿題前に読んじゃおうかなぁ)

リュックに単行本とおにぎりを詰め家に帰ろうと交差点で信号待ちをしていたら

(あ…)

信号無視のトラックが対向車を避けようとし歩道に突っ込んできた。私に吸い込まれるように…。



身体が暑い、うごかない、漫画の続き読みたかったな、お母さん悲しむかな…。

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