第1話 夏休み前。

時は遡り夏休み前。

記憶が薄いが確か今の劇の案はこんな感じで決まった。


「えー、今日から文化祭の準備をしていくわけだけど、まずどんな劇にする?」


「はいはいはい!!俺は妖怪ウ◯ッチとかがいい!!」


…ん?なんか高校生がやるものじゃないのが一番に上がったなぁ?


「いや、東京リベ◯ジャーズやろ!」


「とりあえず案出し合ってそれらをくっつけたいと思います」



…今のところ妖怪◯ォッチと東京リベ◯ジャーズがくっつくしか案出てないんだが?


「……で、どうやって混ぜるんだよ」

と俺が聞くと、文化委員が真顔で言った。

「簡単だよ。妖怪ウォッチを持って過去に戻るの。で、過去の不良たちを妖怪で操って、歴史を変える」


簡単どころか、さらにカオスじゃないか?


それでも話し合いは進んでいく。

「じゃあ、主人公は誰にする?」

「え、そりゃあタケミっちでしょ」

「でも妖怪側の主人公も必要じゃん。じゃあケータ君も」

「……ダブル主人公?」


こうして、いつのまにか“妖怪タイムリベンジャーズ”なる謎の劇が構想されていった。


夏休み中は一応、台本係が集まってざっくり筋書きを作ったらしいが、俺は部活で忙しく、正直半分忘れていた。

そして翌週。黒板に貼り出されたプリントを見て、思わず頭を抱えることになる。


「文化祭演目:クラス劇『妖怪タイムリベンジャーズ』」


……これ、本当にやるのか?


「なあ、これってテーマから決めたほうがよくない?」

ふと後ろの席の翔太が言った。

「テーマ?」

「そう。文化祭の劇って、ただのパロディじゃウケないだろ。笑えるだけじゃなくて、最後に何か伝わるものがあったほうがいいんじゃないか」


その一言で教室が静かになる。

確かに。去年の先輩のクラスの劇は、正直ギャグに走りすぎて観客がポカーンとしてた。


「……じゃあテーマは友情とかどう?」

真由美が提案した。

「友情?」

「うん。妖怪とか不良とか出すにしても、最後は『仲間っていいな』で終わるほうが文化祭っぽくない?」


「なるほど!」と何人かがうなずく。

「じゃあ、妖怪たちと不良たちが最初は敵対してて、でも最後は一緒に戦うとか!」

「タイムリープで過去を変えるんじゃなくて、“友情を取り戻す”みたいな感じにすればいいんじゃない?」


だんだん話がまとまっていくのを感じた。

最初はただのカオスだったけど、「友情」という軸ができると、途端に台本の骨格が見えてくる。


「よし!じゃあテーマは友情。タイトルは……まああとで考えるとして、とりあえず台本係を決めよう」


こうして夏休み前には、クラス全体で“友情をテーマにした劇”をやることが決まったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青春の集大成。 如月 愁 @yokoshu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ