その妖精はかけている。

和菓子。

序章

 窓から差し込む眩い光、白いタイルによって広がる光の粒。そんな幻想的な光景とは裏腹に、メイドは死んだ魚のような眼をして主人の居る執務室のドアの前に立っていた。

許可を貰い部屋に入ると、名指しでメイドを呼び出した張本人である主人が真剣な面持ちで座っている。メイドの目は更に死んだ。

これから何を言われるのかとメイドの、ウルという名を持つ少女の背筋は凍る。


「今君を呼んだのは他でもない、」


ああ、私のメイド人生も終了かと覚悟を決める。この後に続くのは”君を解雇する”もしくは”この屋敷に行ってもらう”などといったことであろう。正直なことを言うと、私は所謂”木偶の棒”のような人間であった。今までこの屋敷に居続けられたのが奇跡なのである。そう無理やりに自分を納得させたところで私は考えるのを辞めた。なるようになる。


「…君にコレの管理を任せたい」


想像しても無かった言葉にハッと顔を上げる。いつの間にか主人は部屋の奥に立っていた。コレとは何かと不思議に思っていると主人はああ、と言って指を鳴らした。

その瞬間、私の視界に光が飛び込んだ。

なんとおおきくてきれいなクリスタルだろう。瞬きも忘れて見ていると、中に何かが入っているのが分かる。

多分だけれど、主人が言っているコレ、とはこの中に入っている何かな気がする。


「か、ル…ウル、聞こえているか」


私がクリスタルに夢中になっているうちに主人は何かを話していたらしい。これだから木偶の棒なんて呼ばれるのだ。私の顔がみるみるうちに青くなっていくのが分かる。


「す、みません。主様」

「聞こえてなかったか。それではもう一度言うのでよく聞くといい」




こうして、私とクリスタルの共生生活が始まったのである。

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