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あの後ミカの体調の事や、リタがもう帰っても良い状態、というよりも帰った方が良い状態になった事により、三人で家へと帰る事になった。
先程まで運転してくれていたアイザックは何やらやるべき事が出来たらしく席を外していて、今回はそのアイザックから伝言を預かっていたミーティアが運転してくれる事となった。
「そんな訳で、マコっちゃんが明日こっちに来るそうだ」
「……よりにもよってこのタイミングでですか」
「ああ。よりにもよってこのタイミングでだ」
そしてこれがその伝言だ。
「まあリタはしばらく……というか今のところ無期限で休みになる訳で、明日明後日位は普通に家にいるだろ? そしたらあーしらが近づけさせなきゃ問題ねえ訳だけど……当事者として頭に入れとけって事だろうな」
「……ええ」
ミーティアから聞いた事の詳細を聞く限り、リタの件とコリクソン特等は本当になんの関係もないだろう。
だが関係されると困る相手が、全くの別件とはいえやってくるという事は、彼を関係者にしない為に立ち回る必要が出てくる訳で。
だとすればその事実は知っておかなければならない事だ。
「ちなみにこの話はリタやミカには……」
二人は今、後部座席で眠っている。
ミカは寧ろ今まで良く動けていたというようなコンディションで、リタもまた精神的にあまりに負荷が掛かり過ぎていたのだ。
ある程度持ち直してリラックス出来たら自然とそうなった。
起きた後、この話はするべきなのだろうか?
「しねえ方が良いだろうな。お前が感じ取った違和感の話とは違って、これはアイツらが知らなければならない話だとは思わねえ。何せあの二人の話じゃなく、部外者との話だからよ」
そう言ってミーティアはこちらの肩にポンと手を置く。
「だからあーしらは、二人が何も知らないまま事を終わらせる為に全力を尽くす。お前もしっかりやれよ」
「ええ、勿論……ところで、俺って今日明日、仕事どうすれば良いですかね……」
「普通に休めよ。アイツらにはきっとお前が必要だし、そもそもお前にだって今は休みが必要だ」
「……ありがとうございます」
「お前マジで休めよ。さっきより顔色悪いぞ」
「大丈夫ですよ。大丈夫」
「……ったく似た物兄妹がよ」
「……」
……分かっている。そういう意味で言われた言葉では無い事は。
だけど自然と考えてしまう。果たして自分達は似ているのだろうか。
今日のミカは本当に凄かったと思う。立っている事もままならないような、あの酷いコンディションでリタを可能な限り引きずり上げた。中々出来る事じゃない。
リタだって多分立場が逆なら。もしくは自分の様な立場に立っていれば同じような事が出来たと思う。そういう確信がある。
では、自分は。
ロイ・ヴェルメリアは。
今日洒落にならない程に色々な事が起きた中で、一つでもやれた事があっただろうか?
何か少しでも二人の力になってやれていただろうか。
最初から最後まで、ただそこに居るだけの木偶の坊になってはいなかっただろうか。
(……似てねえよ)
今日、ずっと知らなかった事を知ることが出来た。だけど変わったのはその程度の事。
何も知らない傍観者から、何かを知っている傍観者に変わっただけだ。
寧ろ知っている分だけ質が悪い。
……兄失格である。
どうしようもなく無能な兄で本当に申し訳ない。
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