動画書き起こし③
『そういえばベッドの下に関する都市伝説あるよね。知ってる? 一人暮らしの女の子の家に友達が泊まりに来て、さあ寝ようって時に急に友達がコンビニ行こうって誘って女の子を無理矢理外に連れ出すんだけど、そしたら友達が血相変えてアンタのベッドの下に刃物持った男が潜んでたよって言うやつ。身近にありそうだからこそリアルに想像できてめちゃ怖いんだよね〜。あ、ここは俺んちなので安心してね』
アタルの唐突な都市伝説語りにチャット欄は困惑の様相を見せる。
圧縮さま:急にどうした?
囮匣:そんなにぺらぺら喋ってたらミレイに見つかるぞ
『ベタな隠れ場所はクローゼットなんだろうけど、俺クローゼットって苦手なんだよね。さっきの怪談じゃないけど、なんかいそうじゃない?
そうだ、さっきの話と似てるんだけどクローゼットに纏わる怪談話もあってさ、ストーカー被害に悩まされる男が家ん中に監視カメラつけたのね。で、出先から帰って監視カメラの映像確認したら映像の途中で刃物持った女が家に侵入しててさ、クローゼットの中に入り込むの。うわマジかって思って見てたんだけど女が出てくる気配なくて、そのうちに自分が帰ってきた。つまり女はまだ自室のクローゼットにいるってこと。この話聞いてから怖くてクローゼット閉められなくなっちゃったんだよね』
この頃からアタルの喋り声に混じって微かに水音が聞こえてくる。それはだんだんと大きくはっきりと聞こえるようになる。
配信の視聴者も気づいたようで、チャット欄で言及されていた。
オカルティックサラサラ:なんかぴちゃぴちゃ音しない?
リゾットバイト:てかさっきより音でかくなってね? 近づいてる?
食っちゃ寝食っちゃ寝:まさか人形が探し回ってるんじゃ……?
囮匣:アタル逃げろ!
リビングの戸が開く音が聞こえる。アタルが隠れるベッド下はリビングから地続きの六畳間。ひたひた、ぴちゃぴちゃと足音と水音が徐々にカメラに近づいてくる。
ミレイ:アタルみつけた
カメラに人の裸足が映し出された。次の瞬間、カメラが大きく揺れた。アタルがカメラを床に落としたようだ。ぐじゃ、ぐじゅ、という不快な音が聞こえる。レンズに水滴が飛び散り画面が見辛くなる。アタルと思わしき男のくぐもった呻き声をマイクが拾っている。
リゾットバイト:え、なになに? どういうこと?
圧縮さま:ていうかさっきミレイがコメントしてなかった?
オカルティックサラサラ:ドッキリだよな? そう言ってくれよアタル!
やがて音が止んだ。アタルが掠れた弱々しい声で呟く。
『ミレイ……待たせてごめん、俺もすぐいくから……』
カメラに誰かの手が伸びてくる。レンズいっぱいに映った掌は黒っぽい液体で汚れていた。ここで映像は暗転し、配信は終了した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます