1話 役に立つ乗り物

私は軍の指揮系統の建物の跡地に足を運んだ、軍はここを放棄してバンカーに避難している、食料は多めに残っていると踏んでいる、それに銃弾があれば……いや、二兎追うものは一兎も得ずだ、食料が先だ。

(まったく、荒れているな……ヤレヤレだ)

音は今のところ、なっていない、と言うことはメカトロンの巡回ルートではないと言うことだ。

(人間の足跡があるな……)

私は足跡を指で拭き、舐めた。

(最近できた足跡か)

声を出せばメカトロンに感づかれる、なので私はテントの中に入っていった、人がいればいいんだが。

(人が来た形跡がある、そしてランタンが点いている、消さずに出ていったのか)

私は静かにランタンの火を消した。

(しかし、ランタンの火が点いているのなら、この近くに誰かが居るってことか……)

生存者が生きている、それかバーサーカーと呼ばれる能力を持たず、この地上にいると言う奴らだ、目的は様々、窃盗、強盗、強姦、その他諸々、ろくでもない奴らだ。

(……ラッキー、缶詰2個と医療キット1個、でもなんでここを訪れた人は医療キットを取らなかったんだ?)

私は戦利品をカバンに詰め込み、テントを後にした。

(しかし、人の気配がしない、バーサーカーが潜んでいるのか?)

私はリボルバーを構え、建物の中に入っていった、中にはメカトロンがいたが、目が見えない個体だ、ただその代わりに聴力が尋常じゃない。物音ひとつ鳴らせば、ぶっ殺しに来るだろう。

(何かに反応してるな……まさか!)

私は忍び足でメカトロンの方向に向かった。私の勘は案の定当たっていた。

(生存者か……仕方ない、アレを使うか)

「時よ止まれぇいッ!!!」

私の能力、それは時間停止、今は2秒しか止められないが、こいつをずらすには1秒もかからなかった。

「そして時は動き出す」

動かした本人は何があったのかがわからぬまま私はそいつを抱えて逃げた。

(こいつの武器は弓だな、だが矢がない、使い果たしたのか……そしてメカトロンは追ってきている、さて、どうする!)

私は駐車場に出た、そこには廃棄された戦車、そして車があった、ここで撒く……いや、軍隊にある車の中に銃弾があるのでは……?

(おっしゃぁぁ!!!!)

私は抱えている子を真っ先に車の後ろに投げ、私も続いて入った。

(何か使えるものは……ッ!!!)

私の目の前にあったのは、対物ライフルだった。

(弾は1発、決めるか!!!)

私はこっちに来るメカトロンに対物ライフルを向けた。

「グッバイだ」

私は普通の銃のように対物ライフルを撃った、当然私の肩は弾けるような痛みが走った。

(痛っ……)

メカトロンの方はきっちりコアを撃ちぬいて、機能停止した。

「はぁ……はぁ……」

(そういえば、こいつ、名前なんだろう)

「私……倉敷浅海……ついて行ってもいい?」

「どうしてなんだ?得なんかないのに、サヨナラだ」

私は倉敷を無視した、どうせ、私の心なんか、分かりっこないんだ。

(しかし、この対物ライフル、使い勝手いいな)

対物ライフルを片手で見ていたが、惚れるような見た目だった。

(そういえば、あのトラック、使えるのかな)

もしも使えたのなら、物を運ぶのに助かる。

(……足音がするな、倉敷か?)

私は後ろにいる奴を確認せずにそのまま歩いた。気配的に人だったから。

(足取りが重い、疲れも出てきた、食料をもうちょっとだけ盗ってから帰るか)

そう決めると足取りが軽くなり、注意力が散漫になった。

(しかし、生き残りがいるとはね……)

その時、後頭部が弾けるような痛みが走った。

「ウオォ……」

(動けねぇ……)

さすがに不意打ちで後頭部をぶっ叩かれるのは乙だ。私は前のめりに倒れ、足に手がかかる。

(バーサーカーか……やらかしたな)

体が動かせない、そして私のズボンを脱がすバーサーカー、起き上がったら1000回ぶっ殺してやる……

「ひっひっひぃ~」

そして下着に手がかかろうとしたとき、バーサーカーの血が私の前に飛び散った。

(……あれ……パンツに手を入れたまま、動かない……)

そしてバーサーカーの手の感覚がなくなったと同時にズボンを履かされた。

「一旦治療をするか」

誰かの手が私の後頭部に触れたと同時、後頭部の痛みが徐々に和らいでいった。

「これで大丈夫、ほら、起き上がって」

(この人、倉敷か……)

「どうして追ってきたんだ、サヨナラと言ったのに」

「この建物、バーサーカーがいたので、もしかしてと思ってね」

倉敷の手にはショットガンが握られていた。

(……)

「来たいんだったら来い、だが、普通の生活をやめることになる」

そして私は缶詰を少々拝借をし、駐車場に向かった。

(キーが刺さってる車、軍隊だからないよね)

私は車から飛び降り、車の鍵が置かれている場所に向かった。

(ここは指揮室、多分ここにはない、幹部の部屋、ここか?)

私は幹部がいつも働いていそうな部屋に入った。

(ここにかかってある鍵を持って戻るか)

私は鍵を盗った、どの時、音が鳴った。

(まずい、来る!)

メカトロンの歩く音が聞こえてきた、私はあわてず、静かにロッカーに入った。

(音の鳴った場所を探してる、だけどロッカーを探すことはしないらしい)

その時、私の足元にネズミが居て、チューと鳴いた。

(あっ、仕方ない、飛び出すか!)

私は決死の覚悟で外に飛び出した。

「やべぇ!!!!」

私は3階の窓から飛び出した。

(大丈夫、五点接地をやれば……足のつま先、かかと、膝を揃えて……そしてひざはやや曲げ気味、身体をやや乗り出し、少し前傾姿勢になる、足裏、ふくらはぎ、太もも、尻、背中~肩の順に転げ落ちる!)

私は五点接地をキメ、私は鍵を持って走った。

(このまま車に乗り込んでエンジンをかける!!!)

私は運転席に飛び込んだ。

(早くかかってくれ!!!!)

そしてエンジンがかかり、私は車をバックさせ、発進をした。

(いっけぇぇぇ!!!!)

目の前にメカトロンがいたが、轢いた。

(倉敷はいるよな……)

後ろのトランクには倉敷がいた。

(このままキャンプに戻るか)

私は運転免許がない、だが車の運転は慣れている、そして安全にキャンプに着いた。

「ふぅ、もういいよ」

私はトランクを開けた、倉敷はごちゃっとしているトランクの中でぐっすりと眠っていた。

「……寝床用意してやるか」

そして私は倉敷の寝床を用意した。

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