@11340724272

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人生というものへの苛立ちが無くならない。

それでも生きなければいけないとバイトに向かう。仏頂面で蒸し暑い夏の夕方に立ち向かった。


僕が思うに、この世界は美しい。

毎日変わる空が、空気が、建物が好きだ。


しかし、希死念慮はいつも突然来る、僕の故意せぬ瞬間に。


あぁ、暑い、焼けて無くなりそうだ。

苛々する。

こんな日は空にすら苛立ってくる

何が美しいだ。何が夕暮れだ。

時を表すだけの自然現象を、美しいと思う感性を、

大切にしているふうに見せて自分に酔っているだけじゃないのか。

苛々する。死にたいだの消えたいだの言ってるうちは消えれなくて。僕はいつも消えたいのに存在していて。いつも何にかわからないのに苛々している。

そんな自分にもさらに苛々する。

いつまでこんなつまらない人生を抱えて生きているのだろうと考える。

アスファルトを見ながら自転車を出した。

そうでなくとも苛々するのに、ハンドルに両手が塞がってスマホすら見れない。

目の前の暑さに集中しろというのか。

苛立ちを抑えようと目を閉じると蝉の声が聞こえてきた。


そういえば小さい頃は蝉の声がうるさくて眠れなかったっけ。


近頃は蝉の声など気にしたこともなかった。

いつからだろう、僕は世界を狭めていたんだな。後悔の多い人生だった。想い出だけに縋り生きてきた。僕は今の世界を見ていない。

今、僕の目に映る世界を初めて見た。

今年、初めて本当の意味で蝉の声を聞いた瞬間だった。

うるさい。ああ夏だな。

肌で感じるほどのヒリヒリと痛い夏のせいで、少し世界が広がったように感じた。

バイトに行く憂鬱なこの時間も、世界が広がるなら、こんなに美しい世界を見ることができるなら、

少しだけ好きな時間になるような気がする。

暑い、だるい、眠い。そんな気持ちを抱えながらも、少し広がった世界を見ようと前を向くと、三色の夕焼けが広がっていた。


あぁ、やっぱり世界は美しい。


息を呑むほどの夕暮れは段々と夜闇にかき消されていった。僕の霧闇は晴れかかっていた。

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