底质ゲーム実演者の相模悠人は、チャンネル登録者数十名の凵えない配信者だ。毎日アルバイトの吊間にスマホを手に取ってゲームを配信するが、腕もトークもイマイチで视聴者からは「草」「もっと上手くなってから配信して」と冷たいコメントが流れるばかり。そんなある日、テレビのニュースで「東京湾に突如謎のダンジョンが出現。誰でも攻略でき、攻略の様子は全て配信可能。広告収益が冒険者の報酬となる」と報じられた。悠人は冪誘半分で「リアルダンジョンのゲーム実演とか夢じゃん」と呼び、さっそく配信アプリを開く。登録制のダンジョン攻略サイトからIDを取得し、初心者でも入れる涙嘉へと向かう。初めてのリアルダンジョンは、薄暑いコンクリートの迷路にスライムが躍ね回り、壁に謎の模様が流れに起こる異世界のような空間だった。悠人は怖る怒良ながらスマホを構えながら「みんな聴こえる？今からダンジョン実演始めます！」と配信をスタートするが、视聴者は相変わらず「死ぬなよw」「お前に無理w」と熱伝のコメントばかり。桀の実に、最初のスライムに足を取られ転倒した悠人は、転がった扺弟に入口の石壁に頭をぶつけ、流血して早くもリタイア定前となってしまうのだった。

額から血を流しつつ、悠人は画面越しに手を振り「まだ序盤だからね！これくらい平気！」と強がったが、視聴者からは「なにやってんだwww」「下手すぎて草」と容赦ないコメントが飛び交う。実況者として耐えてきたので、こういうヤジは慣れっこだ。ゆっくり立ち上がりながら、悠人は自分がなぜ配信を始めたのかを思い出す。昔はプロのeスポーツチームに憧れ、無謀にも大会に出ては惨敗を繰り返した。そこで出会った仲間は皆、次々と実力をつけて有名になったが、自分だけが置いていかれた。アルバイトを掛け持ちしながら、夜にスマホ一台でゲームを配信し、わずかな登録者と雑談する日々。それでも、コメント欄で笑ってくれる人がいるだけで救われていた。

「さて、気を取り直して進みます！」と宣言し、再び迷宮を歩き出す。薄暗い通路の奥には、再びスライムの群れがうごめいている。悠人は腰に下げていた安物のナイフを抜き、スマホの片手操作でコメントを読みながら慎重に進んだ。「右の通路は罠だぞ！」「壁の模様が怪しい」といったアドバイスが流れてくる。ときおり「宝箱開けてみて」という書き込みがあるが、ダンジョンに詳しい攻略サイトで宝箱はほとんどがミミックという罠と読んだばかりだ。悠人は「この宝箱は…怪しすぎるのでスルーします」と言って横を通り抜けようとしたが、コメントが「臆病者！」と煽り始める。視聴者の期待に応えたい気持ちと、ゲーム実況者として笑いをとりたい欲求が入り混じり、結局ふたを開けてみると、出てきたのは本物の回復ポーションだった。「うおお、ラッキー！視聴者さんありがとう！」と叫ぶと、コメント欄は「草」「さすが俺たち」と盛り上がる。どうやらこのダンジョンは、視聴者のコメントに従うほど幸運が引き寄せられるのかもしれない。

その先の角を曲がると、壁に奇妙なレバーのようなものが埋め込まれていた。石製の松明に見えるが、よく見ると根本に隙間がある。悠人が「これ…引いてみる？」と呟くと、コメント欄は「やれ！」「引け！」と大合唱。半信半疑でレバーを下ろすと、鈍い音と共に床が震え、隠し扉がゆっくりと開いた。中からは薄青い光が漏れ、未知の通路が続いている。「まさかのシークレットルート…！？」悠人は興奮し、思わず顔がほころぶ。「これは続きが気になるところですが、体力が尽きたので今日はここまで！」と締めると、視聴者からは「えええー」「次回はよ」と惜しむ声が。悠人は「明日はもっと深いところまで行

ようやく初回の配信を終えた悠人は、視聴者コメントを読み返しながら自分の至らなさと可能性を噛みしめていた。ダンジョンの石壁の温度、湿った空気、地面の凹凸、スマホに伝わる振動――そのすべてがこれまでゲーム画面でしか知らなかった「冒険」の現実味を突き付けた。転んだひざはまだ痛むが、その痛みでさえ胸を熱くする。「次はもっと面白い映像を見せよう」「このダンジョンで上位配信者になってみせる」。スマホスタンドを握りしめ、悠人は明日の挑戦に向けて静かに決意を固めた。

そして家に帰った後、安物のノートに配信の反省点と次の作戦を書き出した。どこでコメントに対応できなかったか、カメラアングルはどうだったか、見せ場を作るためにはどんなアイテムが必要か。視聴者との掛け合いを充実させるために、コメント読み上げソフトの設定も見直した。準備を整えるほどワクワクが増していく。手のひらの震えは、恐怖ではなく期待の証だった。きますので、チャンネル登録と高評価お願いします！」と最後に宣伝し、初のリアルダンジョン配信を終えた。帰り道、彼はふと考えた。この不思議な力を使えば、自分の夢を叶えられるかもしれない。最弱実況者から、最強の配信者へ――悠人の冒険は始まったばかりだ。