降雨の中
「...んんぅ?」
雨の音が鬱陶しいと感じていたが、気づけばしっかりと寝ていたようだ。思考が再起動され、五感も次第に正常化していくのを感じた。
銃は___ある。他の隊員はまだ就寝中。各々疲れているのか、仮眠と言えどもぐっすり眠りに落ちているようだ。
...まだ降り続けている。速めに交代しなければ、第二班の士気と体力はガタ落ち続けるだろう。
しかし、こいつらを叩き起こすのもなんだかな...いや、戦いからずっと温室にいたんだ。ちょっとぐらい速くても問題は___
『敵、2部隊!』
無線機から、雨のようなノイズ交じりでその言葉が発せられた。直後、タタタタタンとフルオートで撃ってきているような銃声が耳につんざいた。
この建物自体にいくつか着弾したようで、ちょっとばかし建物から不気味な音が響いた。
「!?なんだ!」
カタピューラ兵長は飛び起き、続いてヴェリブサ上等兵。二人の一等兵が段階的に起き上がる。
「敵襲、2部隊らしい。参ったな、この状況で...」
「とにかく応戦します!ヴェリブサとタラクは別の部屋で射撃!ペアなんだから離れるなよ!」
「...了解」「了解!」
その言葉を皮切りに、突入班の部下たちは迅速な行動で戦闘態勢を構築、やがて反撃射を始める。初仕事と同じような、微かな熱気を感じながら俺もライフルのトリガーに指を掛け始めた。
轟音と共に、俺を打ち付けるような力が肩を打ち付ける。
「無駄に弾を使うなよ!あくまでも正確に狙え!」
視線を兵長らから再び幹線道路に移した。敵はほぼ二個分隊。火力支援分隊がいると考えてもいいだろう。支援火器が
なんにしろ、こちらにとっては厄介極まりない。
『第一班、聞こえるか?こちら第二班。』
腰当たりに付けた無線機から、再びノイズの混じった声が聞こえてきた。一旦身を潜めて、銃のスリングを腕に巻き付け壁に立てかけると、無線機を手に握る。
「こちら第一班、既に戦闘中。」
『了解、敵部隊は4人がKIA。現在も敵部隊が接近中。』
既に4人も倒したのか、幸先が良いな。まだこちらには致命的な被弾を食らっていないし、このまま順当に戦闘を続ければここも何とか耐えしのげられるかもしれない。
「了解、制圧射撃はやむを得ない場合を除き継続して禁止。精密射撃を行え。」
無線機の送信を切ると、再び銃を構えた。
先ほど見た全景とは違い、敵歩兵が移動間射撃を続けながら接近している。
そして、初任務と明らかに違う点もある。
彼らの背後より支援射撃なるものを行っている分隊も。おそらく、支援分隊の内訳は機関銃か。どうりでフルオートでバコスカ撃ってくるわけだ。
「敵MGの可能性。」
「第二班、こちら突入班。背後の敵分隊、機関銃手は見えるか?」
カタピューラ兵長が、俺の腰に掛けてあった無線機を取り交信する。
それをいいことに、俺は射撃を継続した。しかし、機関銃の存在が極めて厄介で、こちらに向かって苛烈な射撃を繰り返している。
『こちら第二班、既に機関銃手は視認している。現在狙撃中。』
流石、優秀だ。心の内で素直に思ってしまう。それなら、我々は目の前の敵を攻撃するのみだ。
重々しかったトリガーが、今ではすっと軽くなったような気がした。しかし、狙いはできるだけ正確に、そして確実に命を狩るように。
トリガーを引けばすぐに、一発の弾丸が射出され、それが確かなる殺意をもって彼らの近くに着弾する。
しかし彼らは恐れなかった。むしろ、自分を奮励する一つの材料として使っているようだった。
"全ての意志力は、これほどまでに強い武器となりうる"というフレーズ、教育隊時代に一度だけ言われたことを思い出す。
現に直面してから理解した。確かに、意志力というものは強大な武器になり得た。
しかし、凶弾に倒れてしまえば、そのままだ。
もう一発放った弾丸が、高い温度と共に射出された。その弾丸は、雨粒をことごとく避け続けて、やがて一つの意志を持っているかのような殺意を持ち、そして自らの使命を完遂しようとしている。
刹那、それは接近中の敵ライフルマンに着弾した。
前傾に倒れ、彼の小銃は横に滑って、雨に打ち付けられている。しかし、彼らの同胞はそれを気にも留めていない。
「...クソ、狂犬どもめ。」
苛烈な攻撃は、既に心と身体を蝕み始めているようだった。やれやれ、いつまでこれが続くのやら。
レスポンス・コマンド @gorubii
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