クラス転生した同級生たちがテンプレ崩壊の難易度ヘル異世界で奴隷になってたので後から転移した俺が購入してハーレムとギルドを作ってヘル異世界をテンプレ異世界に変えてやるぜ

@oresaikyo

1

頭上には見慣れない二つの月。


俺は街中の路上でひっくり返っていた。


「……異世界か」


声に出すと胸の奥が少し熱くなる。


クラス全員でのバス事故。


崖っぷちから海に落ちた。


その後に告げられた神の言葉。


だが俺だけは、なぜか「遅れて転移させる」と言われていた。


俺はすぐに起き上がろうとして、頭の奥にずしりとした痛みを覚える。

転移時、脳裏に蘇った記憶の数々。


――机ごと廊下に放り出された日。

――上履きの中に仕込まれた画鋲で血を流した日。

――焼却炉に体育着を放り込まれ、笑い声が響いた日。

――屋上で足首を掴まれ、宙吊りにされた日。


あらゆる被虐の記憶が脳裏をかけめぐっていた。


俺はクラスメイトに徹底的にいじめられていた。

連中はクラス全員で結託し、担任でさえ見て見ぬふりをした。

俺は孤立し、何もできず、ただ歯を食いしばって震えることしかできなかった。


「クソ……」


俺は立ち上がり、周囲を見渡す。

行き交う人々は、みな俺を避けるように通り過ぎていく。

露店からは香辛料の匂いが漂い、商人たちの呼び声が市場を賑わせている。


すると俺の耳に日本では聞いたこともなかった謳い文句が響いた。

「本日も新鮮な奴隷が目白押し! 珍しい出自、かつて学舎で魔法を学んだ者も!」


奴隷だと?


興味半分で覗いた檻の中、そこにいたのは信じられない顔ぶれだった。

「……おい、嘘だろ」


同じクラスの女子。男子。

見覚えのあるやつらがボロ布一枚に身を包み、鎖で繋がれて膝をついていた。


マジでテンプレ想像に出る奴隷の格好じゃねえか。


「た、助けて……」


ひとりが俺に気づき、か細い声を漏らす。


まさに金満、奴隷商人といった雰囲気の男がゲスく笑った。

「知り合いですかい? なら安くしておきますぜ」


その哀れな姿を見た俺はスッと胸のつかえが取れる。


だが同時に、心の奥から新たな黒い熱が込み上げた。


「全部買う」


気づけば、そう言っていた。


商人の目が驚きで見開かれる。

「ぜ、全部だと……!? 金はあるのか!?」


俺の手には神から渡された金貨の小袋がある。


「問題ない」


俺は気前よく奴隷商人に小袋を投げつけてやった。


ふっ……キマった。


「おいおい旦那。これじゃ、3人しか買えませんぜ」


「え?」


「全部となると300枚は必要ですが、この袋には30枚しかない」


クソが、キマらなかった。


30。つまり3人分。


あの神様はなんでも買えるとか言って袋を寄越したんだが……。


「……そうか」


檻の中で鎖を引きずりながら同級生たちが一斉に俺を見た。


「頼む! 俺を先に!」

「あのとき優しくしたじゃん!」

「お願い、死にたくないの……!」


かつて俺を机ごと廊下に放り出し、上履きに画鋲を仕込んでいたような連中が、今は涙を流して俺に手を伸ばしている。


「ふっ……気分がいいぜ」


わざと呟くと奴らの顔が醜く歪む。


俺は3人を選んだ。

「お前、褐色ギャル。お前、委員長。お前、陸上部女子」


「えっ、わ、私……?」

「な、なんで……」

「お前が……私を選ぶのか」


驚きと戸惑いの声。


理由は単純だ。

褐色ギャル――明るい金髪と日に焼けた肌。いつも軽口を叩いては俺を小馬鹿にしていた。

委員長――黒縁メガネに冷たい視線。俺を「クラスのゴミ」と呼んでいた。

陸上女子――短髪で真っ直ぐ。いつも俺を蹴っ飛ばして笑っていた。


その3人が今、俺に縋りついている。


「さあ、立て。今日からお前らは俺のものだ」


ギャルがかすれ声で言った。

「……わかった。あんたに従う」


委員長は唇を噛みながら小声でブツブツ言っている。

「……………………」


陸上女子は苦笑を浮かべた。

「皮肉だな……お前に守られるなんてよ」


背後で、選ばれなかった同級生たちが泣き叫ぶ。

「裏切り者! なんで委員長なんか!」

「俺を選べよ! 頼むから!」


「わかった、わかった。なあ、こいつらってどれくらい売り物にされんの?」


「精々、半年ってとこですなあ。売れる見込みがなかったら下層都市に卸す予定ですぜ」


下層都市?


その単語が聞こえた瞬間に同級生たちの騒ぎ声が大きくなった。

「下層都市だけは嫌だ!」

「あそこは人間が生きる場所じゃない!」


檻の中で同級生たちが絶望の悲鳴を上げる。


商人が肩をすくめた。

「あそこは鉱山や汚水処理場の奴隷ばかり。半年もすりゃ骨しか残りませんぜ」


俺は顎に手を当てて考え込む。


3人だけ買っても、残りは地獄行き。


かつて俺をいじめて笑っていたやつらなんて死んで当然だ。


だけど俺が見も知りもしない場所で死なれたら意味がない。


――復讐だ。


俺を笑った全員を奴隷として跪かせてやる。


その瞬間、胸の奥に広がる黒い熱が心地よい炎となった。


「……クラス全員を買い戻す」


呟くと、3人が目を見開いた。

「お、おい、本気かよ」


陸上女子が首を振る。

「金貨300枚なんて途方もないぞ。半年で稼げる額じゃねえ」


委員長が冷静に口を挟む。

「まずは資金源を確保する必要があるわね。宿と職を探すのが先決よ」


ギャルが腕を組み、にやりと笑った。

「へー、あんた案外頼もしいじゃん」


俺は今、神様の目論見を理解した


「異世界に呼ばれた理由があるなら、これが俺の使命だ。あの神様はお前らの奴隷堕ちを見越してたんだ。だから俺を遅れて転移させた」




「全員、俺が買い戻す」




商人が目を丸くした。

「へっ、そりゃ壮大なお話で……ですが今は3人だけですぜ」


金稼ぎは異世界の定番だ。


俺はクラスでひとりぼっちのあいだ。


ずっと異世界転生小説を呼んでたから詳しいんだ。


3人を連れて石畳を歩き出す。


背後で檻の中の同級生たちが必死に叫んでいた。


「絶対、助けに来いよ!」

「裏切るなよ!」


俺は振り返らず、ただ一言。




「待ってろ。全員、俺が買ってやる」




……よし、完璧にキマったな。

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