【短編】異端者共の両奇譚 裏日常ver.
凡才
もっと暗くて良い
ゴーンゴーン。
どこかから音がなった。古臭いような、その音は正月になる除夜の鐘の音と似ている気がした。
「あ゙あー!やっと終わった。」
隣からはこれでもかと言うような疲れた声がする。
「まだ一限しか終わってないんだけど…」
先ほどやっと終わったと発せられた声の本人..シキは、机に突っ伏していた。時間はちょうど九時くらいだろうか。久しぶりの授業しかも一限にもかかわらず彼の精神力は限界を迎えたようだった。
普段私達のいる学校もどきでは授業は行われない。なぜなら彼ら、いや私含めてこの学校には一人も人間という者が存在しない。全員人外。だから人間のことはあまりちゃんとわからない。今こうして学校という中の生徒であるのは本当に形だけでただの真似事だ。なぜ意味もないことを続けているのかはきっとだれもわからないと思う。でも多分、本当は人間になりたいから真似をして形だけでも人間のそれでありたいんだと私は思った。それにうちには幽霊や亡霊なんかも結構いる。生前のやっていたことまた繰り返したくなったのかもしれない。
___今日は暑いな。
そんなことを考えていたら声がかかった。
「あの。ユラさん」
そうだ。私の仮名はユラだ。
声がした方を向くそこには真っ黒で長い髪の青年が立っていた。体型が細身でなんとなく話さなければ女子と間違えられてしまいそうな彼はこの夏という季節には到底当てはまらない厚着をしている彼の仮名はイラという。
「どうしたの?」
「あっいやその…。なにか考えてるのかなと言いますか、えーと…」
「大丈夫大丈夫。ただ暑いなーって、」
私が考えこんでいたのが気になったようだ。
イラの方を向いて机に肩ひじを立てた。
「なるほど、確かに暑いですよね。まだ季節が残ってたとは」
「それはそうなんだけど、厚着着込んでるアンタが言う?ww」
彼の言った。まだ季節が残っている。ここが引っかかるかもしれない、一応説明しておこう。この世界は環境汚染が広がりに広がって氷河期と地球温暖化の最高潮だ。故に暑さと寒さが相殺されてしまい。あまり季節の変化がない。
彼がまだ残っていたのだと感じるのは至極当然のことなのだ。まぁしかし彼が長袖を着ているのだからたとえ寒暖差がほぼ無くとも暑そうではあるがそれは彼のプライバシーというものに深く入る気がするので追求するのはやめておこうと思う。
「いや、まぁアイデンティティーなんで!」
そういってにこっとした。閉じられた目は瞬間だけ全くの光を失った。
__きれいだな。
光を全く反射せずなにかが渦巻いて本来の瞳孔が隠された目は何度見ても私はきれいだと感じる。
「そっかー。あとさ、この教室暗くない?」
「・・・。」
「全然他のやつらもいないし…。」
「んー...。」
なにか隠してるな。
「なにがあるの?言えよぉ」
「えっとですね。次移動。」
「はあああ!?」
当然の移動宣告にはあ?としか出ててこない。
すぐさま机から身を乗り出して時計を確認する。あと一分でちょうど二限の開始時刻。今すぐに出たところで間に合うかどうか。
「あんたら何ぐだぐだしてんの?先生にバレたら首吊らせれるよ!?」
「うぇっまじ?」
「嗚呼ー。」
何故ゆえにここまで呑気なのだろうか。
首を吊るのは本当に苦しいから嫌いなのにこいつらときたらもう慣れてきてやがる。
さすが常習犯。おそらく体罰をくらおうがなんだろうが平気なのだろう。
私は次の授業の教科書とノートとで腕に抱え込み、
「じゃぁ先行ってるから。ちゃんと来いよー!」
一応忠告と先に行く宣言だけして教室を飛び出した。
思いっきり開けたせいかドォンをすごい大きな音が鳴ったが今はそれに構っている暇はない。
あとの二人はどうなるんだろうか、そんなの私の知ったことではない。
こんなことになるならもっと教室を暗くしておいてくれ。
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