生きている

長山レイ

第1話

ふわりと浮かんで

どこかへ飛んで行きたくなる

そんな衝動に駆られる時がある

だけど、そんなことはしない

なぜなら私はそれが起きて良いことではないことを知っている

それは私の財産であり、幸運である


あなたが見ている世界は本当か

それを知る術はない

しかし世界はいつも一つである

そういうものだ

見せかけの世界に囚われてはいけない

どこまでいっても自分はいつも正しく、世界が変化しているのだ



私は自分を騙す方法を知らない

一度知ってしまったことはなかったことにはならない

忘れようと思っても忘れられるものではない

他人を裏切りたくないという思いは、自分を裏切りたくないということでもある

つまりその行為は否定されるものである

未来に向けて行動していた自分を全て裏切ることになる

嘘をついていた自覚はないし

それは嘘ではなかったはずだ

今の自分は許しても、過去や未来の自分は許さないだろう



歪みに囚われずに生きてほしい

新しい自分になろうとか、そんな残酷なことは言えない

ただ、それを受け入れて前に進もうとする人や

その瞬間を生きようとする命の力になりたい

死にたいと思ってもいい

幸せにならなくてもいい

ただ呼吸をし

感情の変化を感じ、五感に意識を向けていればいい


なぜ生きるのかわからない

だけどもう少しの間生きていてもいいかなと思う

そう思えるのは、私にある程度の能力と恵まれた環境があるからに過ぎない

偶然私は死ななかったし、死を現実的に考えることができない環境にいた

ただそれだけのことだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生きている 長山レイ @document

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ