第47話 セックスとは

 僕の顔を見るなりシモンが文句を言う。

「伍長、1人欠けたら仕事が増えるんだよ。それに1日馬車に乗っているだけでよかったなんていいなあ……。あれ? なんでそんなに戦闘後みたいに服がぐちゃぐちゃで、死にそうな顔をしているのさ」

 文句の途中から非難の響きが薄くなり訝しげな表情になった。

「シモンが代わってくれるというなら喜んで代わるよ。小さな子供が7人。それと一緒の馬車に乗るのが楽だと思っているならね」

「ああ、うん。その人数の子供の相手は地獄だね。余計なことを言ってすいません」

「分かってくれた? とりあえず着替えたい。この軍礼服を営繕部隊に持っていかなくちゃ」

 

 着替え終わると着ていた軍礼服を簡単に畳んで営繕部隊に持っていく。

 それからみんなのところに戻って食事をした。

 夕飯は予想どおり甘いものがつく。

 粘り気と弾力がありナッツの入った鮮やかな色のお菓子だった。

 子供たちに嘘を言ったことにならなくて良かったと思う。

 食事を終えた後にジョイス什長を誘って他人がいないところに連れていった。

 何かを察したのか什長はどういうことかを問いただすことなく世間話をしながら同行してくれる。


「俺はそれほど甘いものが好きってわけでもないが、たまに食う分には悪くないな。うちの嫁さんは喜んだだろう」

「すいません。貴重な自由時間に。この後は奥さんに会いに行くんですよね?」

「うんにゃ。移動中は別行動だぜ」

「そうなんですか?」

「まあな。陣中でイチャイチャすんな、ってな。まあ、恋人や配偶者を残して出征している者もいるから配慮しろってことらしい。ということで時間は気にしなくていいぜ」


「そうは言っても時間をあまりかけて迷惑をかけるわけにはいかないので。えーとですね。変なことを聞きますけど、夜寝ている間に……」

 什長の時間を奪うのは申し訳ないと言いつつ僕は口ごもった。

「あー。あれか。お漏らししちゃうみたいな?」

「そうなんです。僕、もう子供じゃないのに。でも、なんで分かったんですか?」

「そりゃ俺はクエルのことなら何でも分かるぜ。というのは冗談だ。本気にしてそんな顔をしないでくれ。罪悪感にいたたまれなくなる。なんか病気じゃないか、って心配しているんだろ? 大丈夫だ。心配しなくていい。俺も出る」

 什長もそうなのか。僕はほっとする。


「それで、急にどうした? 別に今までも話をする機会は……、この一両日は無かったか。俺はずっと外泊だったからな」

「それもあるんですけど、先ほど小用を足しているときに将軍に見られてしまってこのことを思い出したんです」

「は? 見られた?」

 僕は事情を説明した。

「そりゃ大変だったな」

「はい。すごく恥ずかしかったです」


「で、何か言われたか?」

「しばらく身じろぎもせず立っていましたが、何も言わずに立ち去りました」

「そりゃまあ、コメントしづらいか。まあ、事故みたいなもんだから、問題ないだろう。世の中にはわざわざ女性に見せにいくのもいるがな」

「そうなんですか?」

 そんな奇特なことをする人がいることに驚いてしまう。

「おしっこをするところを見せるんですか? 何のために?」

 什長は手で自分の額を叩いた。


「ああ、まーたクエルに余計なことを言っちまった。さっきの話に繋がるからまあいいか。別にションベンするのを見せるんじゃない。チンチンを見せるんだよ。そして相手が恥ずかしがるのを楽しむんだ」

「それが夜中のお漏らしとなんの関係があるんでしょう?」

「実は夜に出ているのは子供の素なんだ。それを女の人の穴の中に入れると子供ができる。で、子供の素を出す行為をセックスと言うわけだが、それは気持ちいいんだ。特に男は。無理やりそういうことをしようとすることもあるほどにはな」

「僕が蹴飛ばした男はシィリュスさんにそれをしようとしていたということですか?」


「そういうこった。だけど、それは女の人にとっちゃ辛いわけよ。普通に痛いことも多い。ケツの穴に鉄棒つっまれるようなもんなわけさ。それに子供ができちまうかもしれないし」

「僕、全然知りませんでした」

「別に知らなくたっておかしくはねえ。で、男の方の子供の素ってのは大人になると作り続けられるんで、たまに出さないと体の中の容器が一杯になる。若いうちは作る量も多いもんで寝ているときに出ちまうんだな」

「なるほど。よく分かりました。でも、下着が汚れるのは困るんですけど」

 什長はにんまりと笑って僕の肩を抱く。

「だから、オネエチャンのいる店に行くわけさ。お金を払って前もって出しておくわけよ」


「女の人は辛いんじゃないんですか?」

「上手くやると女の人も気持ちよくできる。個人差も大きいな。お互いの相性ってもんもある。それにまあ、相手が気持ちよくなるなら自分はそれほどでもなくても我慢するってこともあるだろうよ。恋人だったり夫婦だったりすると。俺とシィリュスのようにな」

「でもお店の人は初めて会う人でしょう?」

「まあ、そこは金が介在するからな。どうしても金が必要ならするしかないということもある」

 そうか。

 僕が軍礼服の賠償金を払えなそうというたきにシモンが体をと言っていたのはそういうことか。

 あれ?

 僕は男だけど……。


 什長は僕の肩を抱く腕に力を込めた。

「まあ、クエルだとそうなるか。でもそんな顔をするな。あちらさんはプロだ。痛くないようにする方法もあるし、穴を使わない技もある。そこは実地に試してみようぜ」

「什長はシィリュスさんがいるじゃないですか。奥さんがいるマルコ先輩はお店に行かないですよね」

「まあ、そうなんだが、俺はそういうところがだらしなくてな。色んな女の人としたいんだよ」

「シィリュスさんに悪いですよ。そこはちょっと尊敬できないです」

 什長は僕の肩から腕を放すと胸を押さえる仕草をする。


「クエルの純粋な眼差しが胸に痛いぜ。でも俺はクエルにもあの気持ち良さを体験して欲しいんだけどなあ」

「なんでそんなに僕をああいうお店に連れていくことに情熱を注いでいるんですか?」

「俺も良く分からん。まあ、なんかクエルを見てると余計な世話を焼きたくなるんだな」

「折角ですけどお店に行くのは遠慮しておきます。でも、色々と教えてもらったことは本当に感謝してます。教えてもらったからこそ、確かに面と向かって人に聞けることじゃないことも理解できました。色々と男と女の間にはあるんですね」


「クエルがこんな感じで素直で可愛いのはいいんだが、ちょっと気をつけろよ。もうここまで話せばついでなんで言ってしまうが、男同士でもセックスしたがる奴がいるからな。クエルとしたいっていうのはたぶんいる」

 目をパチパチしてしまった。

「えーと?」

「さっきも言っただろ。セックスは気持ちいいんだ。クエルのケツに突っ込もうという奴に気をつけろよ。俺が何を言っているのかよく分からんと思うがそういう趣味なんだと思え」

「はあ」


「経験してないとそういう反応になるわな。というわけでクエルも一度やってみると分かるかもしれないぞ」

「だからシィリュスさんに悪いんで僕は行きませんって」

「じゃあ嫁さんの許可得ればいいか?」

「何を言ってるんですか」

 色々と聞いたその日の夜、僕は天幕の中で目が覚める。

 什長が変なことを言うから変な夢を見てしまった。

 大きくなったクリスが犬のように四つんばいになっていて、僕は後ろから覆い被さるという内容だったような気がする。

 そして、だんだんと覚醒してくるとほんのちょっとだけ下着が濡れているのが分かった。


 


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