魔法使いの夢

朝淵アサ

プロローグ

夢を見ていた

雲の上から自分を俯瞰する夢

夢を見ていた

自分の住む街をふわふわと飛び回る夢

夢を見ていた

魔法使いが大きな竜を退治する夢

夢を見ていた

⬛︎が魔法使いになる夢


「はぁ」

目を覚ます。アラームがなる10分前、まだ少し寝れたのかと少し落ち込む。目が覚めてしまったのは、おかしな夢のせいだろうか。


体を起こして、ベッドから出る。リビングはもう陽が差し込んでおり、立っているだけでも汗ばみそうなので冷房をつけた。

6月上旬、初夏と言うにはもう暑すぎるくらいの気温だ。軽く伸びをして高校へ向かう準備を始める。いつもより10分余裕があるのでのんびりと。そして、結局いつもと同じ時間に家を出る。

「あっつ」

突き刺すような陽を腕で遮りながら、薄目で太陽を見上げてみる。

「勘弁してくれ、まだ6月だろ」

など、独り言ち、家の鍵をかける。


普段から学生や社会人でいっぱいの電車で、たまたま空いた1席に座り、「ふぅ」と一息つく。後方の窓から、ちらと外を見る。夢で見た街、何ら普段と変わらない街。

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