第4話 悪巧み
「うぅ」
暗闇の中目が覚めた。
「よくも我がアース帝国軍を半壊してくれたな、魔王」
「うるさい。そっちが勝手に私に向かってきただけじゃん」
「ふん、先に人を殺したのはそっちだろうか」
手を見ると、上にあげられて立ったまま拘束されている。
これ、手枷の内側に針がついている。足かせにも同様に。
そして体は、棘のついたくさりに縛られ、私の体から血が出ている。
だが、馬鹿だな。この程度、ダメージなんて負わないのに。
私を苦しめるのは毒だけだ。これくらいの痛み、屁でもない。
でも、この厳重な拘束。ふつうに痛い。しかも毒の痛みも相まって地獄だ。
「動きたいなあ」
「動けるわけがないだろう、貴様が殺した人たちも家族がいるんだぞ、それぞれの生活があるんだぞ」
「へー、そうなんだね。私には一切の興味がわかないなあ」
「貴様!!」
剣で腹を貫かれる。
「ごめんね、私死なないんだ」
「ほう、それは知っている。だが、痛みは感じるのだろう?」
「まーね。でも、私はそんなのどうでもいい。今の私の胸の中にあるのはお前たちに対する憎悪だよ」
「ふん、そんなのどうでもいいさ」
そして座り込んだ。
こっちは暇だし痛いんだけど。
「ぐうう」
また痛みが強まった。別の場所で発した毒で誰かが死んだのか。川に毒を流しているし、毒の霧を発したし、アース帝国の民はどんどんと痛みを感じていくのだろう。
それを楽しみながら、長い余生をこの狭い檻の中で暮らすのもありかもな。
でも、私は苦しむ民をこの目で見たい。
「そうだ」
私が拘束されてるなら、毒の分身体を作ったらいいじゃない。
私は毒の分身体を作り出し、そのまま一気に町の方へと繰り出させる。
一応看守を殺して鍵を奪うという手もあるけど、それは面白くない。
拘束中に毒を飛ばし、敵を殺す。
「ポイズンソルジャー。お願いね」
私が拘束されているのに、未曽有の危機に陥る。これがいいんだ。
さて、私はポイズンソルジャーの視界を借りて、街を見る。
ふーん、良い感じじゃん。この町の人たちの顔がどうゆがむのかが楽しみだなあ。
行けえ。
ポイズンソルジャーは敵を殲滅していく。
そのたびに痛みが襲い掛かってくるけど、もはやどうでもいい。
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