第2話 戦闘そして敗北


「さてと」

 痛い足を堪えて、アース帝国へと向かって行く。

 帝国には沢山の人がいるだろう。


 その、沢山の人の悲鳴。きっと楽しいだろうな。


 そう思うと、痛みにも耐えられる。


「ふうふふふふ」


 私は検問所へと進んでいく。


「とまれ、怪しいやつめ」

「私は別に怪しくないよ。むしろ、私を歓迎してほしいな」


 そして門番の顔に手を当てる。

 すると、私の毒で、門兵の顔はドロドロに溶けていく。


「ポイズンデビルキングが来たぞー!!!」


 兵の一人がそう発して逃げていく。


「そんな名前じゃないよー、私は詩織だよー」


そう言ったけど、聞こえてないみたい。

まあ、馬鹿は仕方ないよね。


「私も、やるか」


 毒を製造する。これだけの数の敵を滅ぼすにはちと時間がかかる。

 だが、恐らくこれは現れる将に対して使うことになるだろう。



「ポイズンデビルキングとお向けする」


 毒を練っていたら、鎧を着ている男がやってきた。


「私詩織だよ。そんなダサい名前じゃないもん」


そう言って私は頬を膨らませた。

全く。本当に心外だ。


「なら、魔王詩織だな」

「私魔王なんて名乗った覚えはないんだけどなー」


なんで魔王ってわざわざつけるんだろう。

まあ、厨二感があるからいいけど。


「ぬかせ。貴様の所業は見るも絶えないものだ。地獄に落ちろ」

「ははは、地獄に落ちるのはあなただよ!!」


 男は私に向かって行く。


「セイントラッシュ!」


 光の槍で私に向けて沢山の突きが向かってくる。


「それくらい防いで見せる」


 毒の剣で防ぐ。そして、そのまま、


「ポイズンショット!」


 毒の弾丸を放つ。これで終わるはずだ。


「無駄だ」


 だが、毒が鎧に弾かれた。

 そして、そのまま男は叫ぶ。


「貴様に対する対策などしていないわけがないだろう。このウェイル・ラングレーが貴様を殺す」


 やれやれ面倒くさい。私も暇じゃないのよ。

 だが、休む暇もなく、どんどんと槍が突かれていく。


「はあはあ」

「息が上がってきたな。そろそろ終わらせてもらおうか」


 まずい、痛すぎる。

 小時間の戦闘なら行けると思ってたけど、ここまで時間がかかるとは。

 私の能力は時限爆弾。毒の痛みがどんどんと蓄積して私の肉体を苦しめる。

 戦闘中にこんな痛みがやってきては戦闘に集中なんてできない。


「痛いわね。さっさと死ね」


 毒の弾を連発。時間はかけられない。

 いくら毒耐性の高い鎧でも流石に耐久度くらいはあるはずだ。

 そう、ゲームで言うところでのね。

 鎧にHPバーのあるゲームも私はしたことがある。

 そのゲームでは、ダメージが蓄積すると鎧がもろくなるしようだった。


「死ね死ね死ね」


 だが、鎧は一向に溶ける様子が見えない。


「魔王とは心外だな。私だけで倒せるじゃないか」

「うるさいっ!」

「このまま戦っていても有利になるのは私だなあ」


 このままじゃ本当にまずい。まさか毒耐性強の武器があるなんて聞いてないよ。

 かくなる上は仕方がない。


「鎧をはがす」


 私の残された手はそれしかない。毒を固形化して、動かす。


 「さあ、動け。ポイズンゴーレム」


 さらに、毒の化身で、鎧を強引にはがす。


「むむ、数を増やして私に対抗しようというのか。私はそんなものには屈しない」


 私に一直線に向かってくるウェイル。読み通りだ。


「近づいたら負けだよ」


 毒で半径二メートルに毒のドームを作る。


「さあ、この沢山のゴーレムとこの密集地点で戦ってみようか」


 毒で生み出されたたくさんの毒兵。

 彼らに任せる。


「さあ、勝てるかなあ、アース帝国の戦士よ」


 この人数から鎧を守り抜くことは不可能なはずだ。


「くそ、バーンフレイム」


 炎が弾ける。だが、そんなちんけな炎で消滅するほど甘い毒ではない。


「さあ、終わりだ」



 ゴーレムが顔の鎧を外した瞬間、私はベノムショットをお見舞いする。

 その毒によってウェイルは毒によって顔が解けて、消滅した。


「ふう、これで終わりかな。……っ」


 体が痛い。強者を殺したから毒が強まったのか、それとも動きすぎたからか。


 これ以上の毒のダメージはまずい、死ぬほど痛い。

 耐えられなくなってしまう。


「貴様ぁ!!、ウェイルの仇は私がとってくれよう」


 まずい、増援か。

 もう体力なんて残ってない。


「でも、ここで倒れるわけには行かないよね」


 なんとか立ちあがり、毒を装填する。


「消えちゃええええええ」


 毒をグミ撃ちする。

 死ね死ね。私の視界から消えろ。


 だがそのたびにダメージが来る。目がくらくらしてくる。

 良いが減にしろ。毒の痛み? そんなの知らない。ここが私の死地だ。


 燃えてきた。


「ここで勝たなきゃ、私じゃないよねえ」


 毒よ震えろ。お前の餌はここにたくさんある。

 喰らえ、喰らえええええええ。


 目の前の敵がどんどんと溶けていく。気持ちがいい。

 あ、でもだめだ。体力が尽きた。



 目の前にはまだたくさんの敵がいる。

 ここで倒れるわけには行かないの。

 激痛に屈するわけには行かないの。

 私は、私はあああああああ。

 そこで、意識が途切れた。

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