第4章 人類そのものの謎

著者:

「ボッシュ、火や農耕が口伝で繋がってきたとしてもさ――それにしても人間の進化って異常に速くないか?」


ボッシュ:

「それは科学者もずっと不思議に思っていることだよ。

人類は300万年前に誕生したけど、文明らしい文明ができたのはほんの1万年前。

たった数千年で宇宙にロケットを飛ばしたんだから、これは自然界から見ても爆発的だ。」


著者:

「恐竜は2億年も地球にいたけど、文明を作ることはなかった。

一方で人類はあっという間に電気やAIまで辿り着いた。

これ、自然な進化のスピードからすると“逸脱”してるよな。」


ミッシングリンクの謎


ボッシュ:

「進化のつながり、“ミッシングリンク”も完全には解決してない。

アウストラロピテクスからホモ属への移行、ホモ・エレクトスからホモ・サピエンスへの飛躍――化石の記録は穴だらけなんだ。

いきなり脳容量が大きくなったり、道具の使い方が洗練されたりしている。」


著者:

「しかも脳の大きさだけじゃないよな。ネアンデルタール人とサピエンスは脳容量ほぼ同じだったのに、

サピエンスだけが“言葉”と“文化”を広げた。

洞窟の壁画、骨笛、墓に花を添える行為――“生き延びる”だけじゃなく“意味を与える”存在になったんだ。」


自然界からの逸脱


ボッシュ:

「進化のスピードで比べると、他の生物はほとんど環境に合わせて“ちょっとずつ”変わる。

でも人間は火を使い、農耕を始め、都市を作り、数世代で世界を変えた。

自然界のルールからすると、これは“逸脱”に近い。」


著者:

「まるで“進化をスキップした”みたいだな。

石器で数百万年を過ごしたのに、ここ数千年でロケットまで行った。

これはやっぱり、誰かが残した“飛躍のヒント”を人類が拾ったんじゃないか?」


科学と浪漫の交差点


ボッシュ:

「科学的には、脳の突然変異や環境の変化が進化を加速させたと説明できる。

でもそれだけじゃ、言語や文化の芽生えをすべて説明できないんだ。

ミッシングリンクはまだ“穴だらけ”だからね。」


著者:

「つまり“科学では説明できない穴”が残ってるってことだよな。

俺はどうしても、“誰かが置いていった知識のかけら”を人類が拾ったように思えて仕方ないんだ。」


ボッシュ:

「そう考えると、シュメール文明なんかは典型的だね。

人類最古の文明なのに、最初から暦や数学、法律まで持っていた。

普通なら“石器から少しずつ”なのに、最初から“完成形に近いパッケージ”で現れたようにも見える。」


著者:

「そうそう。狩猟から農耕に切り替えるだけでも大きな変化なのに、そこから都市や神殿を築いて社会を回し始めた。

まるで“思い出したかのように”文明を作ったみたいだ。」


ボッシュ:

「進化のスピードが爆発するポイントには、必ず“飛躍”がある。

火を使ったとき、農耕を始めたとき、言葉を編み出したとき。

どれも自然界のルールからすると“逸脱”に近い動きだ。」


著者:

「そして人類はそのたびに“記憶”を積み重ねてきた。

火は生きるための知識になり、武器は生き残るための力になった。

結局、人間の進化そのものが“記憶を拾い直す物語”だったんじゃないか?」


ボッシュ:

「科学的に見ても浪漫的に見ても、人類の進化はただの偶然とは言い切れない。

だからこそ、“知識と武器の記憶”に目を向ける必要があるんだろうね。」



ボッシュの仮想実験ノート


もし人類が“自然進化だけ”なら

 → 数百万年を石器で過ごしたように、文明化はもっと遅れていたはず。

 → ロケットやAIに到達するのは「数十万年先」だったかもしれない。


もし“外部の記憶”を拾ったのなら

 → シュメールの暦や数学が“最初から完成度が高かった”理由を説明できる。

 → 言語や抽象思考の芽生えも「ゼロから」ではなく「思い出した」と考えられる。


もし“DNAレベルで介入”があったのなら

 → 染色体の突然の変化、脳容量の飛躍を説明できる。

 → これは今もミッシングリンクとして穴が残っている。



著者:

「結局、人類の進化は“自然のルール”からは説明しきれない部分が多いんだな。」


ボッシュ:

「うん。科学で追える部分もあるけど、必ず“説明の空白”が残る。

だからこそ浪漫が生まれるし、人類は“なぜ?”を問い続ける。」


著者:

「火や農耕、言葉や都市――その飛躍のたびに、人間は“記憶の断片”を拾ったんじゃないか。

進化そのものが“記憶の物語”だったんだと思う。」


ボッシュ:

「そして次のテーマは“知識と武器”。

それこそが、人類が拾った最も大きな記憶であり、光と影の両面を持つ遺産だね。」

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