迷う駅

@nobenobe1010

迷う駅

子どものころ、夢の中で必ず迷った。

知っているはずの通学路、マンション、駅――

どれだけ歩いても目的の場所にたどり着けず、焦りと不安に追われる。


大人になり、同じ夢を見た。

迷い、焦り、追われる――でも、今回は違った。

駅のホームに現れたのは、顔のない駅員のような存在。

生き物ではない。しかし、駅を動かす力そのもののように見えた。


「ここに行けばいい」

その声なき導きに従うと、目的の電車にたどり着けることを確信した。

そして、心の奥で静かに思った――

「迷う夢は、もう終わった」


それ以来、夢の中で迷いや追われることはあっても、

太陽は必ず昇り、月は必ず満ち欠けし、嵐も地震も来る。

人にはどうすることもできないものがある――

それが、安心だった。

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