お返事まだカナ😄❓

眞辺りあ

お返事まだカナ😄❓

『お返事まだカナ😄❓』


また、例のしつこい客だ。

スマホからのメッセージを見た瞬間、佳穂はうんざりした。


当然のように既読無視し、煙草に火を点ける。

ふぅーと、息を吐いた後にまたスマホが鳴った。


『いまナニしてるのカナ😄❓』


チッ、と思わず舌打ちをする。

ガールズバーで働いて2年以上経つが、ここまで粘着質な客は遭遇したことなかった。


「どうかしたの?」

わたしの様子を見かねて店長が声を掛ける。

およそ50歳を超えているとは思えない、若々しい容姿に毎回驚く。


「…前に来た客からしつこくメッセージが来てて」


「それは嫌ね…」

「確か他の店でも女の子に粘着してるって聞いたわ」

「佳穂ちゃんも気をつけてね」


「店長ありがとう!わたしそろそろ帰るよ。終電なくなるし」


「あらそう。気をつけて帰るのよ」


そう言って店を出た直後だった。

スマホが鳴る。


『そろそろ終電カナ😄❓』


ひぃっ!と、思わず叫び声を上げる。


スマホを投げつける。

「…なんなのよ!こいつ…!気持ち悪い!」


またスマホが鳴った。

『イマから会いに行ってもイイカナ😄❓』


そのメッセージを見た途端、全身に鳥肌が立ち、スマホを置き去りにして、一目散に駆け出す。

気づいたらサンダルを脱ぎ、裸足になっていた。


「本当になんなんだよっ!」

「少し会計、ごまかしただけなのに…」

「しつこいんだよ!!」


やっとの思いで、駅前に着く。

午前0時を回っている。

駅前は人影もなく、閑散としていた。


息を切らして、ベンチに座る。

服はヨレており、足裏からは砂利を踏んだであろう、血が垂れていた。


「これからどう帰ろう…」


途方に暮れていると、真後ろから声がした。


「お返事くれなかったね…?」


振り向いた瞬間、視界にあったのは、笑顔のまま近づいてくる男の顔だった。


「お返事まだカナ😄❓」



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お返事まだカナ😄❓ 眞辺りあ @avemaveria

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