第3話 体験
僕とモコが向かい合わせに座っていて、僕の後ろには城先生、モコの後ろには
「私は男性を縛る時でも手は抜かないから安心して任せてくれたら良いよ。もし、痛いとか痺れるとかそんな感覚があったらすぐに教えてね」と優しい声で説明してくれる。手を抜かないという、フレーズが、すこし気になったけど、僕は「ハイ、わかりました」としか返事が出て来ない。モコもどうやら同じような説明を受けているようだ。
手を後ろで組むように言われる。無理はしなくてもいいと言われたが、何とか後ろに手を組む事ができた。そして緊縛が始まる。
後ろで先生の気配が変わったのを感じる。視線を背中に感じる。そう思ってると、手首が縛られていくのがわかった。そんなにキツくないなと思ってると、先生の手が私の前に周り縄を胸の上に巻いていく、そのままぐるっと2周する。そして後ろで一度結んでしっかり2周した縄が固定された。
目の前で同じようにモコが縛られている。
僕は縛られながらモコを見てる。モコもしばられながら僕を見てる。
僕達は同じように縛られながら、自分の姿を相手に見ていた。
2周巻いた縄を、整えるように、押し上げながらすっと指を通されると、胸の上の4本並んだ縄が綺麗に揃う。縄は、二つ折りにして、折り曲げた側から縛っていくという説明を受けた。だから2周で4本の縄になるのだ。
後ろから左脇に縄が通されて、肩の前の縄に掛けられて、また後ろ側に脇を通され帰っていく。その辺りで、一本目の縄が終わったのか、新しい縄を継ぎ足しているようで、その縄がさっきと同じように右脇を通って戻っていく。脇を縄が通っていく感触が少しくすぐったい。両方の脇が縄で抑えられて、胸の上の縄がなんだか安定したような気がする。
目の前で同じように縛られているモコが見えて、二人が今同じ格好なんだ。そう感じると、何だか嬉しくなった。
本来、自分の縛られている姿は自分の視界からは殆ど見えないので、何がどうなっているのか、自分では殆どわからないはずだけど、目の前に、自分と合わせ鏡のように縛られているモコがいるから。モコを見ていると自分がどうなっているのか、とてもよくわかる。
モコも僕を見て同じように考えてたりするのだろうか?
次は、胸の下を2周縄が通っていき、上と同様に後ろで結ばれているのを感じる。また今度は左脇腹を通った縄が左の胸下の縄にかけて戻されて、右側に渡されて、また右の胸下に同様にかけられて、後ろにいく。後ろにいった縄が、今度は胸上の縄の背中あたりで、縄が結ばれている。
また、縄が継がれる。自然に、流れの中で繋いでいるのがわかる。
胸の下がしっかり留められて、そのせいで息が浅くなるのを感じた。それが、なんだか心地いいとも思う。男の先生に縛られているけれど、先生の手は力強さより、優しさを感じる。そう思えたのが、不思議だった。
そして目の前でモコを縛る
モコの目の輝きが、変わったように感じた。僕が気持ち良いと思ってるように、モコも気持ち良いと思っているのだろうか?そばに寄って聞いてみたいと思ったけど、勿論、そんなことはできず、僕もモコも身動きが取れなくなっていた。
右後ろで結ばれた縄が首の左側に伸びて、左側胸の下まで下ろされて胸の下の縄を押さえ込むように後ろに回されていき、また後ろで結ばれている。同じように後ろから首の右側に進んだ縄が、今度は右側の胸下の縄にかかって後ろへいき、腕の上の縄にぐるっと一巻きされている。
その時、先生の動きが普段はとても早いのにすごくゆったりしている時があるのに気づいた。
そこからまた左下から前に縄が出てくると、右肩にかかった縄に引っ掛けられて、肩甲骨の下辺りをまっすぐ左側に伸びて、今度は左肩にかかった縄を引っ掛けて、バランスをとるようにギュッと縄が引き絞られる。その瞬間全体の縄がバランスよくグッと身体を締め付けてきて、「あっ」と声が漏れた。
目の前のモコからも、「あぁ」と艶っぽい声が出て、モコの目が興奮を湛えている、そう感じた。そしてきっと、自分も同じような目をしているんだろう・・・そう思った。
それはあの写真で見た
その後、胸の中央で結ばれた縄が後ろに回されて、何か後ろで少しづつ移動し結ばれながら、ぐるっと回るように固定されていく。
最後に、真ん中で縄がしっかり結ばれて、体験の縄が終わったらしい。
「これが、私が教えている基本の胸縄、後手縛りです」先生の声がする。
「モコさんも、トモくんもいい顔をしてるわよ。二人とも縄が好きでたまらない人の顔なのよ」
その後、何かモコに耳打ちしているのが見えたが何を言ってるかまでは、僕の耳には届いてこなかった。ただモコの顔が赤く染まり、何か恥ずかしがっているのはわかった。
「モコさん、気持ちよさそうだね、君も彼女をあんな顔にさせてあげたい?」と先生が耳元で聞いてきた。
自分の気持ちよさに溺れそうになりながら、モコをこうしたい。モコを自分の手でこうしたい・・・そういう欲望が静かに心の中に燃え始めていた。
僕は、深く、深くうなづいて、先生の問いを肯定した。
「じゃあ死ぬほど練習しなさい。私がそうしてきたように、そうありたいと言う強い気持ちがあれば、きっと君にもできるから」
この時の先生の言葉が、その後の自分に何度も聞こえてきて、支えてくれる事を、その時の自分は知る由もなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます