第2話
結論から言うと、私は生きていた。意識ははっきりとしていて、心臓は規則正しく拍動し、息苦しさも感じない。健康な身体……夢のようだ。しかし全裸なのはいただけない。服はどこだ。自分の身体から目を離し、顔を上げると、一人の人間がいた。私の事情を知っていると考えたい。しかしまずは服だ。
「すいません。私は正木悠と言います。着るものがあれば頂きたいのですが」
「そうか。脳拡張機能はこれにはないんだったな。そうだった。マサキユウ。生年月日は?」
気になる単語が出てきた。脳拡張機能……何やら恐ろしげな響きだ。『これにはない』?”これ”とはどれのことだ。辺りを見て、自分の背後、私が元居た場所を見ると、巨大な肌色の物体があった。幅が3m、高さは2mくらいだろうか。ソレの下部中央から赤黒い肉の穴が顔を覗かせている。穴の幅は、人の肩幅ほど。私との位置関係、ここに出てくる前の光景、穴の大きさ。察するに私は────
「マサキユウ。生年月日だ。答えられる?」
「……1999年の9月30日です。質問したいのですが良いですか」
「質問は結構だけど、確認したいことがいくつかある。それに伴って、ホラ、欲しがってただろう。ソレを穿いて」
手渡されたのはパンツだ。
「君は、保管されていた脳をベースに蘇生された過去の人間だ」
運動能力、計算能力、五感、精神状態を検査されたのち、そう聞かされた。
「……まず、貴方の名前は?」
「私のことは博士と呼んでくれれば良い。色々気になることがあるだろう……好きに質問してほしい」
蘇生。過去。保管されていた脳。気になるワードだが、ある程度予想がつく。今私が聞きたいのは────
「博士。後ろのアレはなんですか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます