第6話

"強がりで草"

"魔羅月敗北宣言w"


「あ?負けは負けだろ?ココは萎えるが潔く認めようぜ」


まぁ、こっちからの攻めは間に合わなかったから、負けは負けだろ。


「だが、負けを認めた上でやりたい事はあるぜ?反撃だ」


敵対的な所は徹底的に共生関係から締め出す。


「データ関連の販売とフィギュアの販売は全て予定キャンセル、その上で新作を出す」


"ナニソレ"

"BANされてんのに新作w"


そう、そのぐらいの反応で良いんだ。


「新作フィギュアに関しては今からデモするぞ」


オレは配信画面のシーンを切り替えて、作業机を写すと、部屋に置いてあった[プロトタイプ2b]とマジックで書かれたテープが貼ってあるジェラルミンケースから、一体のマネキンみたいな人体モデルを取り出す。


「コレはまだプロトタイプだからポーズの変更が出来ないんだが、どう言う物なのかを見せるには十分だろう」


"なんか変な人形出た"

"なんだよ"

"意味わかんね"

"不良品のクレイモデルとか売れんよ"


「本当は転送した専用データと同じ姿勢に変化して、モーションデータを送るとそれに合わせて動くバージョンを発売予定だったが、今はまだフィギュアを動かす部分の完成度が低いんだな」


作業端末をいじって、フィギュアの台座に通信ケーブルを接続すると、神楽かえでの裸体モデルと被服、装備品のモデルを転送して、変身のコマンドを送る。


すると、マネキンみたいなフィギュアが光り始めて段々と形を変えていき、光が収まると神楽かえでの形になったフィギュアが現れる。


ポーズは取ってないので、手でゆっくり動かして、それっぽいポーズにしてやる。


「コレはまだプロトタイプで誠意製作中だ、オマエらマラついたか?」


作業机のwebカメラを手で操作しながら、舐め回す様にフィギュアを写す。


配信は30人ぐらい居るんだがコメントが一切ない。


あんまり評価良くなかったか?


「なんだオマエら?固定のフィギュアで売上は良かったから、マラつくアイテム用意してやったのに、やっぱりクレイモデルとかで動かないのじゃないとダメか?」


配信コメントはしばらく止まる。


"コレ、いくらで売るんですか?"

"変身は何回できるんですか?"


お、やっと興味のあるコメントが来たな!


「あー、ちょっとマテ。メモメモ…メタモルフォーゼフィギュアは60万、動くパーフェクトバージョンは120万?10万ぐらいだと思ってたわ…フィギュア動作用のカートリッジ魔石は3万、データは内容を変更するが値段は今まで通り、基本1セット5000円だ。ちなみにパーフェクトじゃないやつでもポーズ変更はできるけど、無理に動かすと中骨の金属が折れるから注意。だそうだ!」


"クッソ高いんですけど"

"見た目はかっこいいけど高すぎるて"


「もう一つの返事をしてないだろう。変身は何回できるんですか?については、魔石が必要だが、テスト中にエネルギー切れは起こさなかった。それに変形したまま魔石外しても、そのまま保存可能…だそうだ」


フィギュアの台座に用意されている魔石の収容スペースから、おはじきぐらいの大きさの魔石を取り出して見せる。


「これぐらいの大きさで、全モデルのテストしてエネルギー切れ起こさなかったから、いろいろいじっても半年ぐらいは保つはずだぞ」


魔石は自前で用意したし、稼働耐久テストは未実施だから、コイルに聞いとこう。


"仕込みだろ"

"詐欺乙"


「お、オマエららしい貧乏ヒキニートのコメントが来たな。ちなみにコレはテスト用だと言ったよな?」


操作端末で別の人物モデルをあるだけ選択して、タイマー変形モードにして、繰り返し動作をさせる。


ピカピカ光りながら、何故か途中で有名どころのアニメキャラクターの変形も挟むがもちろん問題はない。


オレが販売した3Dモデルやどこかで買った3Dモデルも、フィギュア用にデータ変換すれば、体型、装備品、質感が違っても変形可能だ。


"なにこのオーパーツ"

"コレ、魔石使ってるから魔導具で違法なんじゃね?"


「オマエらは本当にオレを犯罪者にするの大好きだな!嫌いじゃないぞ!」


魔導具はダンジョン外でも動作し、危険性のある装置として世間には認識されている。


もちろん未認可の魔導具は違法だし、動かすだけでも問題がある。


「コレはテスト用だと言ったな?要するに実験で動かす為に必要な魔適は既に適合して、さらに問題なく販売できる状態だ」


ジェラルミンケースの中に用意してある、魔導具及び魔石回路基準適合証明書を見せつける。


なお、コイルによると非公開特許も取得済みなので、お上のお墨付きはバッチリだw


「実はフルエディションは、1080度3D映像の動きを再現できる様にする予定なんだが、フィギュアで邪魔になんない様にする小型化がなかなか難しくて、1/6サイズぐらいになるぽいし、色々研究中なんだ。それにめちゃめちゃダンジョン素材使うから研究資金の問題もあるし、いっその事クラファン化するかも知れないな」


"マジですか!"

"すぐにモデルデータを保存しとこう"

"石井、オマエを信じて良かった"


古参の変態どもはご満悦の様子だな。


フィギュアを見せたあたりから、視聴者もじわじわと増えて、30人を超えそうになる。


「ちなみに今回BANしたプラットフォームから今後一切このシリーズの販売はしないと約束する。相手がこの配信に来て「ごめんなさい」しない限りは絶対にしないから安心していいぞ」


"ナニソレw"

"大した事ないじゃん"

"再ダウンロードどうすんねん"


「言ってろ、オレは1年後のフィギュア界隈の変貌を想像してマラついてイキッちまうぜ」


画面内でずっとピカピカしながら変形してるフィギュアを見つめながらハァハァしてやる。


演技だよ?


「販売方法は後日とするが、一人一体の販売になるだろう。データ類は新データフォーマットが必要だから、再ダウンロードについては案内を待て。それに量産出来る代物じゃないから、販売が決まったらしばらく再販は出来ないものと思え」


"なんか急展開でウケる"

"今から貯金するか"

"なんか新しいグッズ販売か?"(英語)


お、海外サイトだけあって、海外勢も見に来てるっぽいな。


ダメ押しのセールスポイントを伝えておこう。


「ちなみに、このフィギュアは質感のコントロールもしてくれる」


オレは端末を操作して、神楽かえでモデルに切り替えると、配信カメラを企画に寄せて、ピンセットで押さえて、装備品は硬くて変形しないのに、肌が見える所はぷにぷにとして変形する所を見せる。


「普通の3Dモデルだとこの質感は再生出来ないから注意が必要だ、それに見た目だけのモデルだと全部の質感はカチコチに硬くなる」


顔マスクされててドヤ顔にならないのが残念だ。


だが、このアイテムをニッチに売って確実な収益を出すのは探索者カメラマンのビジネスプランだった。


何をするかわからないスキルの生成品を、コイルに持ち込んで相談した成果でもある。


コイルは真性の変態紳士でロリコンだが、機械イジリの能力は天才的だ。


「なので、戦闘記録は大事な商材だからな、今後もしっかり確保し続けるぞ」


"マジか"

"ここまでハブられてまだやるのか"

"石井ずっとついてくぞ、クラファン収益化はよはよ"

"英語喋れよ"(英語)


「I sell very amazing figure item, but only for Japan domestic use. Please come to Japan!」


カタコトの英語を配信で伝えると、少し反応が来る。


「まぁ、敗北宣言と宣戦布告は終わったから、面白そうな話は次の配信でやるぞ!foovarで告知すっから、両方フォロー忘れんなよ。じゃぁな」


オレはいつもの二指の敬礼をすると、そのまま配信を切った。


コイルにバイク便を使って送る予定だったUSBメモリはすぐに必要無いだろうから、次のアポイント取った後でも良いかもな。


ソファーで気持ちよさそうに寝ている二匹を見つめて、部屋のエアコンを26℃に設定してやると、オレも寝室で寝ることにした。

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